日々諸々
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クリスマス小噺続きです。
拍手ありがとうございました。励みになっています。クリスマスのお話も楽しみながら書いています。
拍手ありがとうございました。励みになっています。クリスマスのお話も楽しみながら書いています。
店主用デスクに足を投げ出してジャンプをぺらぺら捲っていると、玄関扉がガラガラと開く音が聞こえた。次いで廊下と居間をしきっている扉が開いて、新八と神楽が入ってきた。
「よォ。買出しごくろうさん」
「ただいま帰りました。というか銀さんもお帰りなさい」
銀時の労いに新八は愛想良く答えたが、神楽は一言ただいまヨとボソッと言うと台所に直行してしまった。
「ナニナニアイツ。どうかしたの? 神楽のヤツ。買い物途中で腹でも下したか?」
「あ、いいえ。なんでもない…と思いますよ。あはは」
神楽の機嫌の悪い原因はわかっているが、それを銀時に教えるのも憚られて新八は笑ってごまかした。そして自分も買い物してきた品物を冷蔵庫に納めるために台所に行く。
「なんだ? オカシな連中」
銀時は首を傾げたがたいして気にもせず、またジャンプに視線を戻した。
さっさと片づけを終えた神楽は、せんべいの袋を持ってどすどすと足音も荒く居間へ戻ってきた。長椅子にどさりと座ると袋をばりっと開けて早速せんべいを一枚かじりだす。心の中で銀ちゃんの甲斐性なし、ケチ、マダオと毒づきながら。
新八からクリスマスという行事を聞いて、とても楽しそうだと期待したのだ。神楽の故郷では地球でやるイベントや行事の類がほとんどない。だから新八には悪態をついたが、本当は祝いや祭りが珍しく楽しみでしかたがないのだ。その数ある行事の中でも、クリスマスというのは特別に楽しそうなものらしい。十二月に入ってから町の雰囲気がどことなく華やいだものになっていくのを、神楽も感じていた。あちらこちらで着飾った木、クリスマスツリーを見かけるようになったし、チカチカ光る色とりどりの電飾が飾ってあったりと見ているだけでウキウキする。その上ケーキだご馳走だプレゼントだと聞かされて喜ばないわけがない。
だけれどここは万事屋だ。万年金欠男が所帯を張る家だ。やる時はやるが、普段は覇気の欠片もない、死んだ魚みたいな目をした男が主なのだ。そんな男がそんなナイスなイベントを計画しているとは思えない。
(フン。別にいいアル。私は地球人じゃないネ。そんなしゃばいイベントなんて興味ないアル)
神楽は胸の内で文句を言いながら、がじがじとせんべいをかじり続けていた。
「銀さん。お茶どうぞ」
「お。サンキュー」
新八が銀時のデスクにお茶を置いてくれた。
「はい。神楽ちゃん。お茶なしでおせんべいは喉につかえるんじゃない?」
神楽にもお茶を出し、新八も自分のお茶とともに長椅子に座った。
「私の喉はそんなにヤワじゃないネ。せんべいなんてお茶漬けみたいなものヨ」
「それは無茶でしょ神楽ちゃん。お茶漬けみたいに流し込んだら喉で引っかかって痛いよ」
「うるさい黙れよ駄メガネ。私のことはほっとくネ」
機嫌悪く答える神楽を目の端で見ていた銀時は、そうだそうだと思い出した。
「神楽。ちょっとこっち来い」
「なにネ銀ちゃん。くだらない用事なら後にするヨロシ。レディーは今忙しいネ」
「忙しいってせんべい食ってるだけだろ。イイからちょっと来い。おめェにやるモンがあるンだよ」
なにかもらえるらしいと聞いて神楽がぴくりとした。銀時はデスクの脇に置いておいた袋を取り上げて神楽に見せる。
「ほら。こン中にいいモン入ってるから」
せんべいを置いて仕方ないアルなと言いつつ神楽が近寄ってきた。
「何アルか?」
袋を受け取った神楽が胡散臭そうに言う。
「イイから。出してみ」
袋の中を見ると箱が入っている。それを取り出してみると箱の透明な部分から中身が見えた。
「銀ちゃん。これって…」
神楽は青い目を大きく見張っている。
「これって着飾った木ネ。クリスマスのツリーネ」
「そうそうクリスマス的なツリーだよ」
早速箱を開けてツリーを取り出す神楽。
「うわァ。ホントにクリスマスツリーアル」
町で見かけたツリーとは比べ物にならないほど格段に小さいが、それは紛れもなくクリスマスツリー。銀色の星を乗せて雪を被りりんごと松ぼっくりとプレゼントボックスで可愛らしく飾り付けたられたツリー。
「気に入ったか?」
「私にくれるアルか?」
大きな瞳をくるくるさせて聞いてくる。
「おめェにやるよ」
「ありがと銀ちゃん。とっても気に入ったネ」
「そいつァ良かったな」
見て見てかわいいツリーアル~と新八にも見せに行く。
パチンコの景品であんなに喜ばれてはどこかバツが悪かったが、嬉しそうな神楽を見てほんの気まぐれにももらってきて良かったと思った。新八に自慢している神楽に苦笑しつつまたジャンプを読み始めた。
「銀ちゃん。やっぱりウチもクリスマスやるアルか?」
神楽が期待に満ちた声で聞く。
「あー。そりゃあほっといたってクリスマスの日はウチにも来ンだろ」
本に視線を落としたまま答える。
「そうじゃなくてウチでもクリスマスをやるのかって聞いてるネ」
「クリスマスはやるモンじゃないデショ。来るモンデショ」
「そうじゃないネ。クリスマスの祝いをするのかって聞いてるネ。ケーキ食べたりご馳走食べたりプレゼントもらったりするのかって聞いてるネ」
それを聞いて銀時はばさりとジャンプを置いた。
「それはムリ」
そっけなく言うとエエ~っと抗議の声が上がった。
「二十四日も二十五日も昼夜仕事が入ってンの。だからウチでクリスマスパーチーはムリ。前の日の二十三日か、過ぎてもいいンなら二十六日ならやってもいいケドね」
ただし質素ォ~に粗末ゥ~にねと付け加えた。
「ダメアル。クリスマスはクリスマスの日にやらなきゃ意味ないアル」
「ワガママ言うな。仕事なンだからしょーがねェだろが。二十四、二十五は稼ぎ時なンだよ」
実際十二月に入ってからの万事屋は忙しい。一年で一番依頼が多い時期なのだ。クリスマス前から年末まではスケジュールがぎっしりだ。
「どっちか断ればいいアル。万事屋だって人の子アル。普通にクリスマスパーティーをする権利があるネ」
「バカ言うな。今稼がねェでいつ稼ぐンだ。溜まった家賃を年末までに払わねェと、元旦の朝日を拝ませねェってババァに言われてンだぞ。それでなくたって年越しには金がかかるンだよ。雑煮の餅も買えなかったらどうすンだ。飲み屋のツケも払わねェといけねェし」
「そんなの銀ちゃんの勝手アル。いつもグータラして働かないからそうなるネ。それで子供の楽しみを奪う権利はないネ!」
「ダメだ。二十四の仕事も二十五の仕事も外せねェ。パーティーがしたいなら別の日にしろ」
どうしても聞き入れられないとわかり神楽はうつむいた。
「神楽ちゃん。万事屋はサービス業だから仕方がないよ。みんなが休みたい時に仕事が入るのがサービス業なんだ。僕の姉上だって二十四日も二十五日も仕事だよ。クリスマスには一日早いけど、二十三日にやろうよ。それなら良いって銀さんだって言ってるんだし」
新八がとりなしたが、神楽はぶんぶんと首を振った。クリスマスはクリスマスの日にやるからクリスマスネとブツブツ言いながら。
「日本人はクリスマスより年越しと正月の方が大事なんだよ」
銀時のダメ押しが出る。
「銀ちゃんのバカァ。わからずや」
手に持っていたツリーを銀時に投げつけると、神楽はバタバタと外へ出て行ってしまった。
続く
「よォ。買出しごくろうさん」
「ただいま帰りました。というか銀さんもお帰りなさい」
銀時の労いに新八は愛想良く答えたが、神楽は一言ただいまヨとボソッと言うと台所に直行してしまった。
「ナニナニアイツ。どうかしたの? 神楽のヤツ。買い物途中で腹でも下したか?」
「あ、いいえ。なんでもない…と思いますよ。あはは」
神楽の機嫌の悪い原因はわかっているが、それを銀時に教えるのも憚られて新八は笑ってごまかした。そして自分も買い物してきた品物を冷蔵庫に納めるために台所に行く。
「なんだ? オカシな連中」
銀時は首を傾げたがたいして気にもせず、またジャンプに視線を戻した。
さっさと片づけを終えた神楽は、せんべいの袋を持ってどすどすと足音も荒く居間へ戻ってきた。長椅子にどさりと座ると袋をばりっと開けて早速せんべいを一枚かじりだす。心の中で銀ちゃんの甲斐性なし、ケチ、マダオと毒づきながら。
新八からクリスマスという行事を聞いて、とても楽しそうだと期待したのだ。神楽の故郷では地球でやるイベントや行事の類がほとんどない。だから新八には悪態をついたが、本当は祝いや祭りが珍しく楽しみでしかたがないのだ。その数ある行事の中でも、クリスマスというのは特別に楽しそうなものらしい。十二月に入ってから町の雰囲気がどことなく華やいだものになっていくのを、神楽も感じていた。あちらこちらで着飾った木、クリスマスツリーを見かけるようになったし、チカチカ光る色とりどりの電飾が飾ってあったりと見ているだけでウキウキする。その上ケーキだご馳走だプレゼントだと聞かされて喜ばないわけがない。
だけれどここは万事屋だ。万年金欠男が所帯を張る家だ。やる時はやるが、普段は覇気の欠片もない、死んだ魚みたいな目をした男が主なのだ。そんな男がそんなナイスなイベントを計画しているとは思えない。
(フン。別にいいアル。私は地球人じゃないネ。そんなしゃばいイベントなんて興味ないアル)
神楽は胸の内で文句を言いながら、がじがじとせんべいをかじり続けていた。
「銀さん。お茶どうぞ」
「お。サンキュー」
新八が銀時のデスクにお茶を置いてくれた。
「はい。神楽ちゃん。お茶なしでおせんべいは喉につかえるんじゃない?」
神楽にもお茶を出し、新八も自分のお茶とともに長椅子に座った。
「私の喉はそんなにヤワじゃないネ。せんべいなんてお茶漬けみたいなものヨ」
「それは無茶でしょ神楽ちゃん。お茶漬けみたいに流し込んだら喉で引っかかって痛いよ」
「うるさい黙れよ駄メガネ。私のことはほっとくネ」
機嫌悪く答える神楽を目の端で見ていた銀時は、そうだそうだと思い出した。
「神楽。ちょっとこっち来い」
「なにネ銀ちゃん。くだらない用事なら後にするヨロシ。レディーは今忙しいネ」
「忙しいってせんべい食ってるだけだろ。イイからちょっと来い。おめェにやるモンがあるンだよ」
なにかもらえるらしいと聞いて神楽がぴくりとした。銀時はデスクの脇に置いておいた袋を取り上げて神楽に見せる。
「ほら。こン中にいいモン入ってるから」
せんべいを置いて仕方ないアルなと言いつつ神楽が近寄ってきた。
「何アルか?」
袋を受け取った神楽が胡散臭そうに言う。
「イイから。出してみ」
袋の中を見ると箱が入っている。それを取り出してみると箱の透明な部分から中身が見えた。
「銀ちゃん。これって…」
神楽は青い目を大きく見張っている。
「これって着飾った木ネ。クリスマスのツリーネ」
「そうそうクリスマス的なツリーだよ」
早速箱を開けてツリーを取り出す神楽。
「うわァ。ホントにクリスマスツリーアル」
町で見かけたツリーとは比べ物にならないほど格段に小さいが、それは紛れもなくクリスマスツリー。銀色の星を乗せて雪を被りりんごと松ぼっくりとプレゼントボックスで可愛らしく飾り付けたられたツリー。
「気に入ったか?」
「私にくれるアルか?」
大きな瞳をくるくるさせて聞いてくる。
「おめェにやるよ」
「ありがと銀ちゃん。とっても気に入ったネ」
「そいつァ良かったな」
見て見てかわいいツリーアル~と新八にも見せに行く。
パチンコの景品であんなに喜ばれてはどこかバツが悪かったが、嬉しそうな神楽を見てほんの気まぐれにももらってきて良かったと思った。新八に自慢している神楽に苦笑しつつまたジャンプを読み始めた。
「銀ちゃん。やっぱりウチもクリスマスやるアルか?」
神楽が期待に満ちた声で聞く。
「あー。そりゃあほっといたってクリスマスの日はウチにも来ンだろ」
本に視線を落としたまま答える。
「そうじゃなくてウチでもクリスマスをやるのかって聞いてるネ」
「クリスマスはやるモンじゃないデショ。来るモンデショ」
「そうじゃないネ。クリスマスの祝いをするのかって聞いてるネ。ケーキ食べたりご馳走食べたりプレゼントもらったりするのかって聞いてるネ」
それを聞いて銀時はばさりとジャンプを置いた。
「それはムリ」
そっけなく言うとエエ~っと抗議の声が上がった。
「二十四日も二十五日も昼夜仕事が入ってンの。だからウチでクリスマスパーチーはムリ。前の日の二十三日か、過ぎてもいいンなら二十六日ならやってもいいケドね」
ただし質素ォ~に粗末ゥ~にねと付け加えた。
「ダメアル。クリスマスはクリスマスの日にやらなきゃ意味ないアル」
「ワガママ言うな。仕事なンだからしょーがねェだろが。二十四、二十五は稼ぎ時なンだよ」
実際十二月に入ってからの万事屋は忙しい。一年で一番依頼が多い時期なのだ。クリスマス前から年末まではスケジュールがぎっしりだ。
「どっちか断ればいいアル。万事屋だって人の子アル。普通にクリスマスパーティーをする権利があるネ」
「バカ言うな。今稼がねェでいつ稼ぐンだ。溜まった家賃を年末までに払わねェと、元旦の朝日を拝ませねェってババァに言われてンだぞ。それでなくたって年越しには金がかかるンだよ。雑煮の餅も買えなかったらどうすンだ。飲み屋のツケも払わねェといけねェし」
「そんなの銀ちゃんの勝手アル。いつもグータラして働かないからそうなるネ。それで子供の楽しみを奪う権利はないネ!」
「ダメだ。二十四の仕事も二十五の仕事も外せねェ。パーティーがしたいなら別の日にしろ」
どうしても聞き入れられないとわかり神楽はうつむいた。
「神楽ちゃん。万事屋はサービス業だから仕方がないよ。みんなが休みたい時に仕事が入るのがサービス業なんだ。僕の姉上だって二十四日も二十五日も仕事だよ。クリスマスには一日早いけど、二十三日にやろうよ。それなら良いって銀さんだって言ってるんだし」
新八がとりなしたが、神楽はぶんぶんと首を振った。クリスマスはクリスマスの日にやるからクリスマスネとブツブツ言いながら。
「日本人はクリスマスより年越しと正月の方が大事なんだよ」
銀時のダメ押しが出る。
「銀ちゃんのバカァ。わからずや」
手に持っていたツリーを銀時に投げつけると、神楽はバタバタと外へ出て行ってしまった。
続く
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