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クリスマス小噺最終話です。今までお付き合いいただきましてありがとう
ございました。この後小噺は、追加修正をして一つにまとめてTEXTにUPします。さてその作業が年内中にできるかは怪しいのですが。


拍手ありがとうございました。毎日更新は大変でしたけれど皆様の拍手にはげまされて楽しくできました。

お返事不要とのことですがメッセージを下さった方、ありがとうございました。

それでは小噺へ。続きへどうぞ。




寝返りを打った手がさらりとした物に触れた。ん? と思って目を開けてみればそこにあったのは長くて黒い髪。そうだった。桂といっしょに寝たんだったと思い出す。
よいしょと体を持ち上げて向こうを向いている彼を覗きこんだら、ふさりと閉じられた長い睫。熟睡している様子に安心して、丸まっている体をこちらに引き寄せた。くるむように抱きしめて、甘く落ち着いた香りのする髪に顔を埋めるようにして再び眠りについた。
次に目を覚ました時は腕の中は空だった。なんだよ帰っちまったのかよ帰るなら一声かけてくれれば良いのにと思う。
ちらりと目覚ましを見たら八時過ぎ。十時には今日の仕事の現場に着かなければならないから、起きるには丁度良い頃合だ。新八もそのうち出勤してくるだろう。だけど寒そうだな居間に出てくのヤだなと思う。しばらくぐずぐずしていた銀時だったが、うんと伸びをしてからぬくぬくとした布団に別れを告げた。
枕元に置いてある綿入れ半纏を肩にはおるとのっそりと立ち上がる。素足に畳が冷たい。襖を開ける前にキンと冷えた居間の空気を覚悟した。しかし銀時を覆ったのはほわりとした暖かい空気だった。どうしてこんなに暖かいのだろう? 夕べストーブ付けっぱなしで寝ちまったか? と思ったが、空気には暖だけでなく美味しそうな味噌汁の匂いが混ざっていた。
ぺたぺたと居間の床を歩いて台所に向かったら、そこからひょいと桂が顔を出した。
「起きたのか? 銀時。丁度良い。朝飯の支度ができたから起こしに行こうと思っていたところだ」
長い髪を一纏めにして羽織の袖にたすきがけをした桂は、甲斐甲斐しく朝食の用意をしてくれていたようだ。
「お茶を入れてやろう。少し待っていろ」
そう言って奥に引っ込んだ。
(なんだ帰ったンじゃなかったンだ。良かった…)
ほっとして長椅子に座った。
同衾した朝、銀時が目覚めるのを待たずに桂が帰ってしまうことが半分。朝餉の支度をして共に食事をすることが半分。今日は良いほうの確立二分の一だ。
「なんだ? 貴様。何をにやけておる。顔が気持ち悪いぞ」
お茶をすすりながら胸の内が表情に出ていたらしい。お盆を胸にかかえた桂が眉間に皺を寄せている。
「てめェにンなこと言われたくないンですケドォ。ウザクてキモチワルイのはてめェの専売特許だろ」
「何を言うか。俺はうざくも気持ち悪くもない。ついでに天パでも糖尿でもないぞ」
「天パも糖尿もカンケーねェだろォォォォ」
しっとりとした気分でいさせてくれないのが桂だ。良い雰囲気を良い感じにブチ壊してくれるのが桂だ。今日も朝から元気良く罵りあう男が二人。
「ウゲッ!」
「ぐはっ!」
言い合いをしていた二人の鳩尾にパンチが叩き込まれた。
「ナニ朝からイチャついてるネ。イチャコラするなら人目も人の耳もはばかってイチャつくヨロシ。おまえらのはうるさ過ぎるネ。レディーの睡眠を妨害して良いと思ってるアルか?」
腹を押さえて蹲る二人の間に仁王立ちの神楽がいた。
「コノヤロー神楽。ゲホゲホ。加減なしでボディーブローを決めやがって」
「うるさくしてすまなかったなリーダー。しかし、ごほっごほっ…。朝餉ができたから丁度良いぞ」
「朝餉?」
ぷんぷん怒っていた神楽が青い瞳をきょとりとさせた。
「おまえが作ってくれたアルか? ヅラ」
「ヅラじゃない。桂だ。リーダーの好きな焼き魚も用意したぞ」
桂が作ってくれる朝食がとても美味しいことを神楽は知っている。桂は手の込んだ料理は作れないが、これぞ日本の朝食というものを用意してくれるのだ。神楽はそれが大好きだ。料理は上手だが朝が弱くてまともな朝食が用意できない銀時とは違い、しっかりしたご飯が朝から食べられる。
「ふふん。それなら焼き魚に免じて許してやるネ」
「かたじけない。リーダー」
たちまち機嫌の直った神楽と律儀に礼を言う桂に銀時は苦笑した。


朝食のテーブルを囲みながら、夕べのクリスマスパーティーの様子を神楽は楽しそうに話して聞かせてくれた。桂は穏やかな笑みを浮かべそれを聞いている。
「良かったなリーダー。リーダーは良い子だから楽しい時間を持つことができたのだ」
うんうんと頷く桂。
「でも一番すごいのは銀ちゃんアル。内緒でパーティーの計画をしてくれてたんだヨ。びっくりパーティーで嬉しいのが百倍になったネ」
神楽が自慢げに言った。
「イヤ。神楽それは実はな…」
銀時が本当のことを話そうとすると、桂が袖をつかんで止めた。桂を見ると目線で言うなと言っている。
「そうだな一番すごいのは銀時だなリーダー。さすがに万事屋の主だけのことはある。こやつは普段はグータラの駄目人間だがやる時はやるのだ」
「ありがと銀ちゃん。私昨日のことは忘れないネ。できればまた来年もやりたいアル。その時はおまえも来いヨヅラ」
「きっとお招きに預かろう」
桂の返事によしっと頷いて神楽は残っていたご飯をかきこんだ。
片づけをすませた後、桂は和室から包みを持ち出してきた。神楽を呼んでそれを手渡す。
「ナニネ?」
「一日遅れてしまったが、俺からのクリスマスプレゼントだ」
神楽の大きな青い瞳が更に大きくなった。
「ありがとうヅラ。開けてもイイアルか?」
「もちろんどうぞ」
がさがさと包装紙を剥がし箱を開けると球体状のものが入っている。それを取り出して神楽はしげしげと眺めた。
「ナニだかわからないネ」
「これはプラネタリウムというものだ。ここのスイッチを入れると部屋の中が星空になる」
「へええ~」
ぷちっとスイッチを入れてみたが、明るい部屋の中では何が映し出されているのか良くわからない。
「暗いところでないと良く映らないな」
「私の部屋で見てくるアル」
神楽はプラネタリウムを持ってぱたぱたと押入れに向かった。襖を開けて上段に上がるとぴたりと襖を閉めた。
その間に銀時はつと桂に近寄った。
「いいのかよ。全部俺がやったってことにしちまって」
パーティーの段取りをつけてくれたのは桂だ。それを知らせないで良いものか銀時は気にしていた。しかしその心配を余所に桂は柔らかな笑みを浮かべた。
「良いのだ銀時。俺は万事屋が明るく笑っているのを見るのが嬉しいのだ。そして万事屋の中心はおまえだ。子らにおまえが頼もしい主だと思ってもらえればそれで良い」
それを聞いて銀時は跳ねまくっている癖っ毛をくしゃくしゃとかき回した。桂がそこまで思ってくれているなら、本当のことを知らせるのは却って野暮というもの。
(ったくホントにてめェには敵わねェよ)
くいっと腕を引くと形の良い唇を掠め取った。
「うわあ~。キレイアル。ホントに星がキラキラしてるアル~。押入れの中が星空になったネ」
神楽が歓声を上げている。
「銀ちゃんもヅラもこっちに来るアル。いっしょに星空を眺めるヨロシ。今だけレディーの部屋に入ることを特別に許可するネ」
銀時がふわりと笑顔になった。それを見て桂も微笑む。そして玄関からは「お早うございます」と新八の元気な声が聞こえてきた。


終わり
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