日々諸々
H21年1月30日登録
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小噺続き書けました。はあはあぜえぜえ。
続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。クリスマス小噺もあと少し。がんばります。ってやっぱりクリスマスが終わってしまうーーー。
続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。クリスマス小噺もあと少し。がんばります。ってやっぱりクリスマスが終わってしまうーーー。
街中を電飾が彩り軽快だったり厳かだったりな音楽が響く、そんな今日はクリスマスの日。冬最大のイベントの日に相応しくしんしんと冷え込んできたかぶき町の夜に、道を挟んで向かい合う二人の男。
「よォ。ミニスカサンタ」
「今夜もご苦労だな。トナカイ殿」
昨日に引き続きキャバクラの客引きをする銀時と桂。
「トナカイが板についてきたな銀時。いっそのことサンタさんの国に行ってそりを引く仕事に転職してはどうだ?」
「てめェこそそのカッコのまんま西郷ンとこ行ってホステスやってこい」
「ホステスじゃない桂だ」
「俺だってそり引きじゃねェ。万事屋だ」
「勝負はまだ続いているからな銀時」
「わかってらァ」
仕事に入る前にお約束のようにひとしきり罵り合って気がすんだ二人は、憑き物が落ちたように熱心に呼び込みを始めた。ミニスカサンタが一人お客様をご案内になると、トナカイも負けじとお客を連れてくる。それを見てサンタが更にお客を誘い込む。お互い負けず嫌いなので絶対あっちに勝ってやると思っている。そのおかげで開店して一時間もしないうちに、両方の店は満員になった。
少し休憩して良いよとオーナーから言われた桂はふうと息をついた。するとやはり休みをもらったらしい銀時がこちらへ近づいてくる。ほらよと渡されたのはホットココアの缶だった。
「くれるのか?」
「昨日の茶のお返し」
熱いココアの缶を両手で包んで桂はふっと笑みを浮かべた。
「ありがとう銀時。遠慮なくいただこう」
「甘いからイヤだっつーかと思った」
「甘い物は腹持ちが良い。それに体も暖まる」
昨日と同じように二人並んでココアの缶を傾けた。ココアで暖を取りながら、銀時は昼間に行った仕事の話をしていた。桂は桂でやはり昼間に別のバイトに行っていたらしい。お互い貧乏暇無しだなと苦笑いしていると、通りの向こうから巨大な生物が近づいてきた。それは頭に角をつけた茶色のトナカイのコスチュームを着ている。
「ナッナナナニ? アレ。ナニあの見確認不気味生命体」
「失礼な事を言うな。あれは未確認不気味生命体じゃない。エリザベスだ」
銀時はココアを噴きそうになった。
「アレがエリザベスゥゥゥゥ? ペンギンオバケかよオイ。できそこなったタヌキだろォォォォォ」
「何を言うか。タヌキではない。トナカイのコスをしているのだ」
桂の言葉に銀時が目をまん丸くしていると、エリザベスが二人の前で止まった。
「どうだ銀時。愛らしいだろう? 本当にエリザベスはどんな格好をしてもかわいらしい」
桂はベタ褒めである。
「頬染めてンじゃねェよヅラ。てめェウゼェしキモい。ウエエ。これのどこがかわいらしいンだ? どっからどうみても不気味なおっさんの不気味な仮装にしか見えねェじゃねェか」
「おっさんとか言うな。貴様のトナカイコスより百倍はかわいい」
「俺コイツの百分の一の評価ァァァァ?」
二人が言い争っていると、にゅっと看板が突き出された。
『桂さん。用意ができました』
「おおそうか。肝心なことを忘れるところであった。ご苦労だったなエリザベス」
桂が労うと『いいえ。お安い御用です』と看板を掲げた。
「ナニナニ? ナンの話?」
銀時が割り込むと桂が向き直った。
「銀時。おまえの仕事はここまでだ。これより後はエリザベスが引き受ける」
「はァ? おめェナニ言っちゃってンの?」
「エリザベスがおまえに代わり仕事をすると言うておるのだ」
「だからなんで?」
いきなり仕事を代わると言われても訳がわからない。
「今日がクリスマスだからだ。エリザベスがここに来る前に万事屋へ寄ってパーティーの支度をしてくれている。おまえは帰ってリーダーと新八君とクリスマスの祝いをしてやれ」
銀時は二の句が継げず目をぱちぱちさせた。
「せっかくの特別な日だ。親代わりのおまえがいなくては子らも寂しかろう。早く帰ってやれ」
「ンでもよ…」
「大丈夫だ。そっちのオーナーとは話をつけてある。これより後の給金ももちろんおまえに支払われる」
やられたと思った。昨日の話を聞いて密かにクリスマスパーティーの段取りをつけていたのだ。これだから桂には敵わない。こんなことをさらりとするから堪らない。
「さあ。早く行ってやらぬか。二人とも待っているぞ」
『仕事のことはご心配なく。しっかりやっておきますから』
桂とエリザベスに促され銀時は店の裏口に回った。ささっとトナカイの衣装を脱ぐと綿入りの羽織を着る。
「悪ィな。ンじゃまあ後はよろしく頼む」
エリザベスに向かって言うと『引き受けた』と看板で返事があった。二人に背を向けると早足で歩き始めた。
「良いクリスマスをな」
桂の声が追いかける。それを聞いて足がぴたりと止まった。回れ右をして戻ってくる。
「おめェも後から来いよ」
耳に顔を近づけて囁いた。
「したが俺の仕事が終わるのは日付が変わってからだぞ」
「それでもイイ。待ってるから。ゼッテー来いよ」
桂は小首を傾げて考えていたが、やがて云と頷いた。
「じゃあな」
一言残すと今度こそ銀時は万事屋へと帰っていった。
銀時が居間に入ると、パンパンとけたたましい音がしてぱらぱらと紙ふぶきが舞った。
「メリークリスマス。それとお帰りなさい」
神楽と新八がクラッカーを鳴らしてお出迎え。クリスマスっぽいじゃんと苦笑する。
「見て見て銀ちゃん。エリーが来てご馳走やケーキの用意をしてくれたアルヨ」
見ればテーブルの上にはチキンやポテトやピザなどのクリスマスオードブルと、フルーツにデコレーションケーキそしてジュースやシャンパンが乗っている。
「こりゃァ豪勢だな」
桂は随分と張り込んでくれたらしい。彼の万事屋の子供達に対する深い愛情が現れている。
「ウチにもクリスマスが来たヨ」
神楽は大はしゃぎである。
「神楽ちゃんよっぽど嬉しいらしくてずっとジングルベルの歌を歌ってるんですよ」
「そういう新八だってきよしのズンドコ~って歌ってたアル」
「ズンドコじゃなくて清しこの夜だから」
神楽が銀時のデスクに近づいてクリスマスツリーを取り上げた。銀時がパチンコで取ってきたツリー。クリスマスをやってもらえないと知った神楽が悔し紛れに銀時に投げつけ、そのままデスクに飾られていたそれを持って戻ってくる。
「どした? 神楽」
ツリーを持ったまま神楽はもじもじしている。
「銀ちゃん。この間はゴメンアル。銀ちゃんにわからずやなんて言ったネ。せっかくくれたこれを投げたネ」
「そンなこたァ気にしちゃいねェよ」
それを聞いて神楽の顔がぱあっと明るくなった。
「クリスマスにはやっぱりコレアル」
そう言ってツリーをテーブルの真ん中に置いた。小さなツリーが彩りを添えてテーブルが更に華やかになる。
「銀さんも人が悪いですよ。クリスマスをやるならやるって言ってくれれば良いのに。黙って計画してるなんて」
「エ? イヤ俺はそんなつもりは…」
「エリザベスさんから聞きましたよ。銀さんに頼まれて用意をしに来たって」
「アイツが…?」
「新八ィ。銀ちゃんはイイとこ見せようとして黙ってたアルネ。そこンとこをわかってやらなきゃダメアル。それがわからないうちはおまえはいつまでたっても新一にはなれないネ」
「新一ってなんだよ神楽ちゃん。僕は新八で結構です」
桂はあくまでも銀時がこのパーティーの計画をしたということにしてくれたらしい。銀時の顔をたててくれたのだ。
(バカなヤツ…)
万事屋には暖かい団らんを用意して、自分は寒空の下で客引きのバイト。夜中過ぎにやってくる彼の体は冷え切っているだろう。今日の感謝もこめて思いっきり抱きしめて、精一杯暖めてやろうと思った。
続く
「よォ。ミニスカサンタ」
「今夜もご苦労だな。トナカイ殿」
昨日に引き続きキャバクラの客引きをする銀時と桂。
「トナカイが板についてきたな銀時。いっそのことサンタさんの国に行ってそりを引く仕事に転職してはどうだ?」
「てめェこそそのカッコのまんま西郷ンとこ行ってホステスやってこい」
「ホステスじゃない桂だ」
「俺だってそり引きじゃねェ。万事屋だ」
「勝負はまだ続いているからな銀時」
「わかってらァ」
仕事に入る前にお約束のようにひとしきり罵り合って気がすんだ二人は、憑き物が落ちたように熱心に呼び込みを始めた。ミニスカサンタが一人お客様をご案内になると、トナカイも負けじとお客を連れてくる。それを見てサンタが更にお客を誘い込む。お互い負けず嫌いなので絶対あっちに勝ってやると思っている。そのおかげで開店して一時間もしないうちに、両方の店は満員になった。
少し休憩して良いよとオーナーから言われた桂はふうと息をついた。するとやはり休みをもらったらしい銀時がこちらへ近づいてくる。ほらよと渡されたのはホットココアの缶だった。
「くれるのか?」
「昨日の茶のお返し」
熱いココアの缶を両手で包んで桂はふっと笑みを浮かべた。
「ありがとう銀時。遠慮なくいただこう」
「甘いからイヤだっつーかと思った」
「甘い物は腹持ちが良い。それに体も暖まる」
昨日と同じように二人並んでココアの缶を傾けた。ココアで暖を取りながら、銀時は昼間に行った仕事の話をしていた。桂は桂でやはり昼間に別のバイトに行っていたらしい。お互い貧乏暇無しだなと苦笑いしていると、通りの向こうから巨大な生物が近づいてきた。それは頭に角をつけた茶色のトナカイのコスチュームを着ている。
「ナッナナナニ? アレ。ナニあの見確認不気味生命体」
「失礼な事を言うな。あれは未確認不気味生命体じゃない。エリザベスだ」
銀時はココアを噴きそうになった。
「アレがエリザベスゥゥゥゥ? ペンギンオバケかよオイ。できそこなったタヌキだろォォォォォ」
「何を言うか。タヌキではない。トナカイのコスをしているのだ」
桂の言葉に銀時が目をまん丸くしていると、エリザベスが二人の前で止まった。
「どうだ銀時。愛らしいだろう? 本当にエリザベスはどんな格好をしてもかわいらしい」
桂はベタ褒めである。
「頬染めてンじゃねェよヅラ。てめェウゼェしキモい。ウエエ。これのどこがかわいらしいンだ? どっからどうみても不気味なおっさんの不気味な仮装にしか見えねェじゃねェか」
「おっさんとか言うな。貴様のトナカイコスより百倍はかわいい」
「俺コイツの百分の一の評価ァァァァ?」
二人が言い争っていると、にゅっと看板が突き出された。
『桂さん。用意ができました』
「おおそうか。肝心なことを忘れるところであった。ご苦労だったなエリザベス」
桂が労うと『いいえ。お安い御用です』と看板を掲げた。
「ナニナニ? ナンの話?」
銀時が割り込むと桂が向き直った。
「銀時。おまえの仕事はここまでだ。これより後はエリザベスが引き受ける」
「はァ? おめェナニ言っちゃってンの?」
「エリザベスがおまえに代わり仕事をすると言うておるのだ」
「だからなんで?」
いきなり仕事を代わると言われても訳がわからない。
「今日がクリスマスだからだ。エリザベスがここに来る前に万事屋へ寄ってパーティーの支度をしてくれている。おまえは帰ってリーダーと新八君とクリスマスの祝いをしてやれ」
銀時は二の句が継げず目をぱちぱちさせた。
「せっかくの特別な日だ。親代わりのおまえがいなくては子らも寂しかろう。早く帰ってやれ」
「ンでもよ…」
「大丈夫だ。そっちのオーナーとは話をつけてある。これより後の給金ももちろんおまえに支払われる」
やられたと思った。昨日の話を聞いて密かにクリスマスパーティーの段取りをつけていたのだ。これだから桂には敵わない。こんなことをさらりとするから堪らない。
「さあ。早く行ってやらぬか。二人とも待っているぞ」
『仕事のことはご心配なく。しっかりやっておきますから』
桂とエリザベスに促され銀時は店の裏口に回った。ささっとトナカイの衣装を脱ぐと綿入りの羽織を着る。
「悪ィな。ンじゃまあ後はよろしく頼む」
エリザベスに向かって言うと『引き受けた』と看板で返事があった。二人に背を向けると早足で歩き始めた。
「良いクリスマスをな」
桂の声が追いかける。それを聞いて足がぴたりと止まった。回れ右をして戻ってくる。
「おめェも後から来いよ」
耳に顔を近づけて囁いた。
「したが俺の仕事が終わるのは日付が変わってからだぞ」
「それでもイイ。待ってるから。ゼッテー来いよ」
桂は小首を傾げて考えていたが、やがて云と頷いた。
「じゃあな」
一言残すと今度こそ銀時は万事屋へと帰っていった。
銀時が居間に入ると、パンパンとけたたましい音がしてぱらぱらと紙ふぶきが舞った。
「メリークリスマス。それとお帰りなさい」
神楽と新八がクラッカーを鳴らしてお出迎え。クリスマスっぽいじゃんと苦笑する。
「見て見て銀ちゃん。エリーが来てご馳走やケーキの用意をしてくれたアルヨ」
見ればテーブルの上にはチキンやポテトやピザなどのクリスマスオードブルと、フルーツにデコレーションケーキそしてジュースやシャンパンが乗っている。
「こりゃァ豪勢だな」
桂は随分と張り込んでくれたらしい。彼の万事屋の子供達に対する深い愛情が現れている。
「ウチにもクリスマスが来たヨ」
神楽は大はしゃぎである。
「神楽ちゃんよっぽど嬉しいらしくてずっとジングルベルの歌を歌ってるんですよ」
「そういう新八だってきよしのズンドコ~って歌ってたアル」
「ズンドコじゃなくて清しこの夜だから」
神楽が銀時のデスクに近づいてクリスマスツリーを取り上げた。銀時がパチンコで取ってきたツリー。クリスマスをやってもらえないと知った神楽が悔し紛れに銀時に投げつけ、そのままデスクに飾られていたそれを持って戻ってくる。
「どした? 神楽」
ツリーを持ったまま神楽はもじもじしている。
「銀ちゃん。この間はゴメンアル。銀ちゃんにわからずやなんて言ったネ。せっかくくれたこれを投げたネ」
「そンなこたァ気にしちゃいねェよ」
それを聞いて神楽の顔がぱあっと明るくなった。
「クリスマスにはやっぱりコレアル」
そう言ってツリーをテーブルの真ん中に置いた。小さなツリーが彩りを添えてテーブルが更に華やかになる。
「銀さんも人が悪いですよ。クリスマスをやるならやるって言ってくれれば良いのに。黙って計画してるなんて」
「エ? イヤ俺はそんなつもりは…」
「エリザベスさんから聞きましたよ。銀さんに頼まれて用意をしに来たって」
「アイツが…?」
「新八ィ。銀ちゃんはイイとこ見せようとして黙ってたアルネ。そこンとこをわかってやらなきゃダメアル。それがわからないうちはおまえはいつまでたっても新一にはなれないネ」
「新一ってなんだよ神楽ちゃん。僕は新八で結構です」
桂はあくまでも銀時がこのパーティーの計画をしたということにしてくれたらしい。銀時の顔をたててくれたのだ。
(バカなヤツ…)
万事屋には暖かい団らんを用意して、自分は寒空の下で客引きのバイト。夜中過ぎにやってくる彼の体は冷え切っているだろう。今日の感謝もこめて思いっきり抱きしめて、精一杯暖めてやろうと思った。
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