小噺 （クリスマス編 其の一）

腰痛がまだ治らなくて話を書くのが辛い日々。でもせっかくのクリスマス
にクリスマスのお話を書かないのは寂しいので、書けた所までちょこちょ
こと小噺としてブログにUPすることにしました。クリスマスまでには終わ
らないかもしれないけれど、できるだけ毎日書けるようにしたいと思いま
す。ブログもクリスマスに合わせた仕様にしてみました。小噺はENDまで
書けたらTEXTに纏める予定です。

拍手ありがとうございました。くじけそうな私には何よりの薬です。身に
沁みました。ありがとう。

それでは小噺へ。続きへどうぞ。

パチンコ玉がぎっしり詰まった箱を持ち上げて、機械の上でひっくり返し
た。ジャラジャラジャラ～と玉が景気の良い音をたてて、計測器に吸い込
まれていくのが実に気持ち良い。傍を通る人が「おおっ」という顔で見て
いくのも堪らない優越感。一つ空になると次の箱の中身をひっくり返す。
その作業を繰り返している銀時の顔は緩みっぱなし。
「ヘッヘッへッヘ。どうだ！！　積みも積んだり十五箱！！」
誰が聞いているわけでもないのに誇らしげに独り言。
今年一番のフィーバーだ。たまには勝つこともあったが負けたり負けたり
の方が断然多かったのに、そしてパチンコ以外でも禄でもないことに巻き
込まれてばかりだったのに、十二月のこの時機になってこの大当たりだ。
ついに俺にもツキが回ってきたと、少しばかり浮かれても誰にも文句は言
われまい。
「この分だと七、八万にはなるかな。もうちょっと来るかな～。端数は何
にしようかな。やっぱあの高級チョコの詰め合わせかな。それともあっち
のフルーツケーキにしようかな。おまけで神楽ちゃんの酢昆布でも取って
やるかな～」
実に楽しそうに景品を物色する。
計測が終わり玉数がプリントされた紙切れが出てきた。それを景品カウン
ターへ持って行く。
「端数はフルーツケーキと酢昆布にしてくンない？」
カウンターの女性に声をかけてから、ふと後の棚に飾ってあるものに目が
行った。高さ二十センチ程の箱に入ったクリスマスツリー。てっぺんに銀
の星を乗せて雪化粧をして、りんごと松ぼっくりとプレゼントボックスで
飾られた極一般的なシンプルなツリー。
そういやウチにはクリスマスツリーなんてなかったよなと思う。今まで独
身男の一人暮らしだったのだ。そんな物があるわけがない。でも今年は違
う。神楽の顔が思い浮かんだ。
（あんなん飾ってやったら神楽のヤツ喜ぶかな…）
パチンコ屋から出てきた銀時は、交換所で景品を現金に変えてもらいそれ
を財布にしまうと尻ポケットに突っ込んだ。そしてフルーツケーキと酢昆
布が入った袋を抱えクリスマスツリーが入った袋を下げて、万事屋へと向
かった。

続く