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あッッッッと言う間に一ヶ月が過ぎ去りました。この間ブログ、TEXT共に更新がなく申し訳ないことです。

プライベートの重大案件に気を取られて話を書くのもままならぬ状態です。本当は中編くらいの連載の一回目を一月中に上げたかったのにできませんでした。書ける時が来たら書けると今は自分に言い聞かせています。

今日は小噺ができましたのでUPします。以前に「紫陽花の前に佇む銀桂」のイラストを下さったT様のサイトの日記に描かれていたイラストをヒントに書きました。イラストも掲載して良いよとのありがたいお言葉に甘えて、本日の小噺はT様のイラスト付きです。
続きからどうぞ。


日々の拍手をありがとうございます。最近何もしていないのに、お出でくださる方々がいて拍手をいただいて、本当にありがたいことだと思っております。
















銀時は冬の道を背中を丸めて歩いていた。クサクサした気分で歩いていた。仕事も無いのに寒い外をしかもクサクサした気分で歩いている理由はこうだ。

最近万事屋の三人+一匹の家での居場所はこたつのある和室。用事がなければ日がな一日こたつに突っ込まってごろごろしている。今日も今日とていつものように全員でこたつの一角ずつを占めていた。新八はお通のCDをヘッドホンで聞き、神楽はみかんを食べながら時代劇の再放送を見て、定春は居眠りをして、そして銀時は寝そべって片肘をついてジャンプを眺めていた。

三人三様こたつで各々の時間を過ごしていたのだが、神楽が文句を言ったのをきっかけにケンカになった。銀時の足が自分の足に当たって気持ち悪いと言うのだ。誰しもこたつの中では足を伸ばしていたい。その欲求に従っていただけなのに、神楽がぶうぶう文句を言い始めた。中は狭いのだからもっと他人に気を使って足もぶつからないように位置を加減してこたつに入れと言う。

銀サンは足が長いンですゥこたつ一杯占領するくらい長いンですゥ。すいませんね足が長くって。俺はこれ以上避けられないから、足が当たって嫌ならおめェが避けろと反論した。

しかし神楽がすんなりと聞き入れるワケがない。銀ちゃんの足は臭いネ。こたつで暖まると臭さ三倍増しになるアル。それにこたつの中で屁もこくネ。これだかオヤジは嫌アル。臭くて仕方がないネ。おお~臭々と鼻を摘む神楽。

そのせいで銀時はぶちっと切れた。俺が臭ェっつンなら定春はどうなるんだよ。定だって暖まって獣臭ささ三倍増しだぞ。それに俺より定の方が場所取ってンじゃねェかと食ってかかった。定春を引き合いに出したら、神楽は定春の肩を持つ。

定春はいいアル。定春の毛並は当たっても気持ちいいネ。銀ちゃんみたくゴツゴツしてないもん。とあー言えばこー言うのいつもの口ゲンカになった。

まあまあ銀さんも神楽ちゃんもそんなこと言わないで。仲良く暖まりましょうよと新八がとりなしたが、そのころには銀時はすっかり腹を立てていた。

あーもういいですよ。そんなに邪魔なら銀サンは出て行きますよ。おめェらだけ好きなだけこたつで暖まって、ゆでだこになりやがれコンチクショーと捨て台詞を残して家を出てきたのだった。



「ふえ~。さむさむ。やっぱ外は寒ィーよな。短気起こさねェで家にいれば良かったかな」

しかし神楽の悪たれ顔が浮かんでやっぱり腹が立った。

「これからどうすっかな。暖けェとこに行きてェよな」

尻ポケットから財布を抜き出して中身と相談する。生憎財布も寒いと訴えかけてきた。十二月は降るほど仕事があって相当に稼いだのに、年越しや正月の準備に費やし家賃を綺麗にして残った金もなんやかんやといつの間にかなくなった。金が手元にあると気が大きくなって散在してしまうのだ。貯蓄する気など毛頭ない。そして十二月はあれほど忙しかったのに、一月に入ってからはほとんど仕事の依頼がない。故に一月半ばになって万事屋はいつもの貧乏所帯に戻っていた。

「はあ~ぁ。しけてンなあ。これじゃパチンコも行けねェし甘味も食いに行けやしねェ」

パチンコも甘味処も行けないとなると行くところはもう一つしかない。

「ヅラんち行こ。アイツんちなら暖けェし甘いモンも出してくれンだろ」

銀時は桂の家への道を歩き出した。

「引越ししたって話は聞いてねェからまだあのうちに住んでンだよな」

つい十日ほど前に桂の家に訪れた。現在桂はかぶき町にある長屋の一間を借りて住んでいる。長屋の奥さん連中ともすっかり仲良くなって食べ物の差し入れが後を絶たないと聞いて呆れたものだ。指名手配犯の攘夷志士だと知ってか知らずか、奥さん連中は独り身の桂の世話を焼きたいらしい。きっとお尋ね者だと知っていても通報などしないのだ。桂は市井の人々に人気がある。それは彼の容姿のおかげか人徳なのか。

「イヤイヤイヤ。アイツに人徳はねェだろ。アイツにあンのは妄想電波だけだから」

自分で思ったことに自分でツッコンで長屋への道を辿った。

表通りから裏通りに入ると狭い道が続き両脇にずらりと長屋が連なっていた。ターミナル周辺はいかにも近代都市という風情を見せているが、一歩奥に入れば一昔前の江戸が残っている。桂はそういう場所が好きなのだ。そして銀時も嫌いではない。ごちゃごちゃとした所に身を置くと却って落ち着くのだ。

「家にいるよなアイツ。出かけてねェよなアイツ。会合とか会合とか会合とかさ。うん。銀サンがお出ましなんだからゼッテーいる。アイツは家にいる」

寒い中出かけてきて門前払いでは余りに切ない。そのまま家に帰るのはものすごく悔しい。

家にいてくれよヅラと祈りつつ歩いていると、長屋の出入り口から出てくる人があった。濃紺の羽織りに藍の着物を着たその人は桂。

(お。ヅラじゃん。やった。やっぱ家にいた。しかもこのタイミング。俺が来たのがわかったのか?)

桂の在宅にほっとしながら足を速めた。ヅラと名前を呼ぼうとした時、桂が家の中に向かってなにやら声をかけていた。続いて出て来たのは白い巨体。それを見て銀時はさっと長屋の角に隠れた。見つからないように顔半分だけ出して様子を窺う。

(なんだよなんだよ。ペンギンオバケもいるんじゃん。アイツら揃ってお出かけか?)

どうやら二人は出かけるらしい。

「エリサベス。今日も冷えているからこの帽子を被ると良い。頭を冷やすと風邪を引くからな」

言いながら桂は巨大な帽子をエリザベスに被せていた。黄色い毛糸で編まれ天辺にはボンボンが付いている。そして白い糸で頭文字のEの縫い取り。

「良く似合うぞぅ。エリザベス。やはり特注で作ってもらって良かったな。冬になるとおまえの頭が寒そうで気になっていたのだ。これで今年は暖かいぞぅ」

帽子に両手を当てて桂は得意満面だ。

『桂さんもこれを』

エリザベスがプラカードをさっと掲げ、ストールを出した。厚手の生地の薄桃色をしたストールはいかにも暖かそうだ。エリザベスが桂の体にふわりとストールをかけた。

「ありがとうエリザベス。おまえは良く気が付くな」
『そのストール似合いますよ桂さん。素敵です』
「俺よりもおまえの帽子のほうが似合っているぞ」
『いいえ。桂さんのこそ』

二人は微笑み合って延々とお互いを褒めていた。それを見ていた銀時はなんだかむず痒くなってきた。

(ナンなんだアイツら? ナニ薄ら寒ィことやってンだ? イイ年したおっさんが道の真ん中でなんでキャッキャイチャイチャしてるンだ? 寒ィ上に気持ち悪ィこと山のごとしだよ。唯でさえ寒ィのが三倍増しで寒ィ
よ。誰か何とかしてくれよあのバカ二人)

せっかく桂の家で暖まっておやつを食べようと思っていたのに、一人と一匹の気持ち悪い光景を見て、余計に寒くなってしまったではないか。

銀時は二人に向かってダダダッと走っていた。そのままの勢いで飛び蹴りを喰らわせた。

「ぐはあっっっ!!!」
『あべしっっっ!!!』

叫び声を上げて道に転がる桂とエリザベス。

「ろ…狼藉者め。何をするのだ…」

桂がよろよろと起き上がる。エリザベスは怒りマークが書かれたプラカードを掲げていた。

「ナニをするじゃねー。てめェらの方こそナニやってンだ?」

ふんっとばかりに銀時は二人の前に仁王立ちになった。

「おお…。銀時ではないか。こんなところでどうしたのだ?」
「どーしたもこーしたもねーッッッ!!! てめェらこそどうしたアッッッ!!!」

桂は『ん?』 と首を傾げた。しばし考えている様子。

「もしやすると今狼藉を働いたのは貴様か? 銀時」
「狼藉なんて働いてませんー。飛び蹴りなら喰らわせたケドね」
「それが狼藉でなくて何なのだ? やはりおまえがやったのだな。何をする銀時。痛いではないか」
「だァかァらァ。てめェらがナニをしてンのかって聞いてンの」

桂は立ち上がるとぱんぱんと着物についたほこりを払った。エリザベスも立ち上がり落ちていた桂のストールを拾った。

「俺達は散歩に行くところだ。寒いからしっかり防寒してな」

ほら見ろエリサベスの帽子。可愛いだろう? 俺が図案を考えて作ってもらったのだぞと巨大な帽子を指差し自慢するのにこめかみが引きつった。

『桂さん。ストールをかけないと。寒いですよ』

エリザベスが優しい手つきで桂をストールでくるむ。ありがとうエリザベスと桂が相好を崩す。それらを見て銀時のこめかみで血管が切れた。桂とエリザベスの頭にゴンゴンとげんこつが落ちた。

「さっきから何なのだ? 銀時。何故乱暴をする?」

桂が頭を押さえて言い募る。エリザベスは『殺!!!!』のプラカードを手にしている。

「キモイんだよおめーら。何で帽子被せてやったりストール巻いてやったりしてンの? ンなこと自分でできるだろ? それとも一人でできないくれェお子様なの?」
「何を怒っているのかと思えばそんなことか。さては銀時。俺達の仲睦まじい様子を見てヤキモチを妬いたのだな。尻の穴の小さいやつめ」

桂がふふんと言う。

「ナニ言っちゃってくれてンのかなヅラ君は。はあ? 俺がヤキモチ? ンなモン妬くワケねェだろ。てめェらに餅妬くンなら自分に餅焼いて食うわ」
「ヅラ君じゃない。桂だ。仕方のないやつだなおまえは。誤魔化しても俺には通用しないぞ。おまえは幼き頃から仲間外れにされるとすねるやつであったからな。それでいて自分からは輪に加わろうとせぬ。全く困ったやつだ。俺とエリザベスは主従の関係だ。睦まじくて当然であろう」
「だからヤキモチなんか妬いてねェッてッッッ!!! それに俺は仲間外れになっててもすねたことなんてありませんーーーー」

ヤレヤレと言う様に桂は溜息をついた。そして懐から手拭を出した。

「そら頭を貸せ銀時。おまえにも防寒の支度をしてやろう」
「ハイィィ?」

銀時が咄嗟の行動ができないでいるうちに、桂は癖の強い白い頭に手拭を巻いた。

「これで俺達と同じだ。暖かいだろう? さあ一緒に散歩に行こ…」
「誰が行くかァァァァッッッッ!!!!」

手拭をむしり取ると、ボディーブローをお見舞いした。





寒い日が続き、インフルエンザも流行ってきました。皆様も暖かくして毎日お過ごしください。


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