日々諸々
H21年1月30日登録
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新年初の小噺です。でも内容は大晦日です。
続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。拍手を励みに今年もがんばります。
続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。拍手を励みに今年もがんばります。
「今年も銀さんはいないのね。まったくどこへ行っているのかしら。またジャンプ合併号でも買いに行ってるの?」
お妙が鍋の様子を見ながら言った。
「いえ姉上。今回はジャンプを買いに行ったんじゃなさそうです。姉上が鍋を用意してくれるって言ったんですけどね。なんか良くわからないことをほざいてどこかに消えました」
あらそうなの? とお妙は顔を上げる。
「銀ちゃんは蕎麦食べに行ったアル。どこかの隠れ蕎麦屋に行ったアル」
「そうなの? 新ちゃん」
「すみません姉上。アノ人どこかの蕎麦屋に行くって。それなら姉上も誘って僕達も一緒にって言ったんですけど」
「一人で行っちゃったのね銀さん。今年は蕎麦屋と合併するつもりかしら」
「いえ。そんなことはないと思いますけど」
「きっとめっさ美味い蕎麦屋アル。銀ちゃんはケチだから本当に美味い物は独り占めするアルヨ。私達には食べさせてくれないネ」
「あらあらしょうがない銀さんねえ」
そんな人は放っておいて私達で楽しみましょとお妙は銀時がいないことを差ほど気にしていない。
「さあさあお肉が煮えましたよ。神楽ちゃんお茶碗取って。よそってあげるわ」
「キャッホォォォォ。肉だ肉。銀ちゃんいないほうがたくさん食べられていいアル」
神楽の目はお鍋の中の鶏肉に釘付け。いない銀時のことはどうでも良い。
「美味しい物を食べて、紅白を見て、新年になったら初詣に行きましょうね」
三人はにぎやかに鍋を突き出す。今年は少し奮発して水炊きだ。志村家のささやかな大晦日だった。
呼び鈴に応じて玄関に出てみれば、連れ合いが立っていた。
「なんだ銀時ではないか。今頃どうしたのだ?」
「イヤ別に。どうしたって程のことでもないンだケド」
「大晦日のこんな時間にやってくるとは。さては貴様、金を借りに来たのだな。どうしようもなくなって俺のところに来たのだな」
「イヤ違うケド」
否定したが桂は聞いちゃいない。
「家賃や飲み代の払いは溜めるなとあれ程言うたであろう。まったくおまえはだらしのない。毎年毎年懲りないやつだ」
「だァかァらァ。ちげーって言ってるだろがァァァッッッ!!!」
バシーンと黒い頭をひっぱたいた。
「何をする銀時。痛いではないか。多少の金なら融通してやろうかと思うていたのに。このような狼藉を働くならその気も失せたわ」
頭を擦りながら睨みつける桂。
「だからちげーって。借金に来たワケじゃねェって言ってンだろ」
「そうなのか?」
桂が頭を傾げた。
「そうなの。今月はぎっちり仕事して、家賃も飲み代もきれいにしましたー。だいたい金がねェのはてめェもおんなじだろ。てめェに無心なんかするかよ」
桂はうんうんと頷いた。師走の万事屋は忙しく、一年のうちで一番の稼ぎ時だ。
「それなら何用があって来たのだ? 今夜はリーダーたちと一緒ではないのか?」
銀時は癖の強い銀髪をくしゃくしゃと掻き混ぜた。
「イヤあのね。蕎麦食わせてもらいたいなーって思ってさ」
桂は目を丸くした。
「蕎麦? 年越し蕎麦のことか?」
「そう。ダメ?」
「駄目なことはないが。したが除夜の鐘が鳴ってからになるぞ」
「それでもイイから」
「ならば入るが良い」
ようやく桂の了承を取り付けた。
(蕎麦は言い訳に決まってンだろ。てめェと大晦日を過ごしたかったンだよバカヤロー)
胸の中で文句を垂れた。銀時の気持ちなんて鈍い桂は気付かない。
(気づけバカ。というか俺も素直におめェと過ごしたいって言えばいいンだケドね)
そんなことはこっ恥ずかしくて絶対に口にできなかった。
腹が減っていると言ったら、つまみと熱燗を出してくれた。
「後は勝手にやってくれ。俺は紅白を見るから忙しいのだ」
「紅白ねェ…」
「石○さ○り殿が楽しみなのだ」
「ナニ言ってンだ。今年は『ま○恋』の坂○○美だろ?」
「何を言うか。さ○り殿だ。彼女の『天○○越え』だろう」
石○さ○りはバツ一子持ちの熟女だ。年増女が持つ色気に溢れている。桂の好みだ。
「坂○○冬美殿も良いがまだまだ若い。もう少し年を重ねたらもっと良くなるであろう」
「へーへー。わかりましたよ」
桂の熟女好きは昔からなので、逆らうのはやめることにした。
歌はどんどん進み、石○さ○りの番になった。艶やかな声で女の情念たっぷりに歌い上げる彼女に桂は聞き惚れている。歌が終わるとほうと息をついた。
「やはり良いな。さ○り殿は」
うっとりとしている様子に苦笑が漏れた。
そして次の赤組の歌い手は坂○○美。大ヒットしている「また○に○してる」を歌い出す。 銀時は歌を聞きながら、テレビ画面に映る歌詞を見ていた。
(なんかこの歌って…。今まであんま良く歌詞聞いたことなかったケド。なんか、俺達のことみてェだな…)
傷つきたくさんのものを失っても君がいる。一度別れて再び出会い、そして以前よりも想いが深いことに気付く。
ちらと桂を見れば歌に聞き入っているようだった。歌に合わせて微かに頭が揺れている。
(ガラじゃねェか。歌に自分達のことをなぞらえるなンてよ)
それでも再会してヨリを戻した桂への想いは確かなものだ。昔のような若さに任せた激しいものではなく、じんわりと心を暖めてくれるような。自分の芯にしっかりと根ざしているような。
坂○○美の歌が終わった。
「良い歌であったな。○美殿も良い歌い手だ。歌詞が胸に沁みた。聞いているうちに昔のことを思い出した。まるで俺達のような…」
言いかけた言葉を切った。
「なんだよ。まるで俺達がナニ?」
「否。なんでもない」
桂は口を結びまたテレビのほうを向いてしまったが、彼が自分と同じ事を思っていたことはわかった。言うのが照れ臭かったのだろう。歌に自分達のことをなぞらえて共感した事を。
(ヤレヤレ。考えてることまで同じですか)
銀時は苦笑した。でも悪い気分ではない。自分が桂を大切な連れ合いだと思っているように、桂もそう思ってくれている。桂に会えて良かったと思った。
紅白歌合戦が白組勝利で終わった後、桂は年越し蕎麦の支度を始めた。テレビからは除夜の鐘が聞こえ始める。
「待たせたな銀時。蕎麦ができたぞ」
盆に湯気をたてた丼を載せて桂が居間に戻ってきた。
「さあ年越し蕎麦だ。食べると良い」
「サンキューヅラ。そんじゃ早速」
蕎麦を食べさせてと言い訳して桂の家にやってきたが、ちょうど腹も空いてきたのでありがたかった。
「お。お揚げ乗ってンじゃん」
蕎麦に葱だけだと思っていたら、色良い油揚げが乗っている。
「昼間に煮含めておいたのだ。年越し蕎麦だから贅沢して二枚用意したが、おまえに一枚やろう」
「お揚げ二枚が贅沢なんですかコノヤロー」
「そうだぞ。二枚は贅沢だ」
どんだけ質素倹約なんだと思いながら、桂手作りの蕎麦をすすった。
「銀時。蕎麦を食べたら初詣に行こう」
「ハイィィ?」
「過ぎ行く年の無事を感謝し、新しい年の幸を祈願するのだ」
「イヤイヤイヤ。だって寒ィじゃん。朝ンなってから、いやあったけェ昼間に行く方が良くネ?」
「なにを言うか。この寒さの中詣でるから良いのであろう。見も心も引き締まる」
「エエ~~」
蕎麦を食べたら床入りを目論んでいたのだ。肌を合わせ抱きしめて布団の中でぬくぬくと。
「良いな銀時。初詣に行く」
桂の考えは変わらないらしい。銀時はひっそりと溜息をついた。
「わーったよ。蕎麦食ったら初詣に行きますー」
「それで良い」
桂は満足そうに笑った。
蕎麦を食べているうちに、時報が午前零時を告げた。
「おお。年が明けたな」
桂は蕎麦を食べる手を止めると箸を置いて居ずまいを正した。
「銀時。明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
新年の挨拶をされて銀時も胡坐をかいていたのを直した。
「明けましておめでとさん。こっちこそよろしくな」
こんな風に二人で、新年の挨拶を交わせるなんて嬉しいことではないか。
「さあ銀時。さっさと蕎麦を食べるのだ初詣に行くぞ」
銀時は二人でいられることに浸っていたが、桂は初詣に心が飛んでいるらしい。
「チェ。なんだよ情緒のねェヤツだな」
銀時の想いはまるで気付かない桂は早く早くと急かす。
「早くするのだ銀時。大江戸神社では先着で甘酒を振舞ってくれると聞いたぞ」
「甘酒だってェ。なんだよそれを早く言えよ」
残っていた蕎麦を大急ぎですすると、ずずっと汁を飲みほした。
「行くぞヅラ。初詣だ」
「ヅラじゃない。桂だ。現金なやつめ。甘酒と聞いたら行く気になりおって」
「だーって甘酒じゃん。ただで飲めるじゃん。オラさっさとしろよヅラ。はやくしねェと甘酒飲み損まっちまう」
「ヅラじゃない桂だと言うておろう。今年も直す気がないのか貴様は」
「だーっておめェはヅラじゃん。ヅラ以外の何者でもねェじゃん。それともなにか? おめェヅラやめる気か?」
「俺はヅラをやめる気はない。否、間違えた。ヅラではなく桂だと言うておるのだ」
「へーへー。つまりヅラだろ」
言い合いをしながら二人は外出の用意をする。綿入半纏を着てマフラーを巻き、二人はまだ暗い外へ出て行った。
「良い年になると良いな」
「そだね」
吐く息も白い寒さの中、肩を並べて歩き出した。
途中伏字が多くてすみません。一応念のため。
お妙が鍋の様子を見ながら言った。
「いえ姉上。今回はジャンプを買いに行ったんじゃなさそうです。姉上が鍋を用意してくれるって言ったんですけどね。なんか良くわからないことをほざいてどこかに消えました」
あらそうなの? とお妙は顔を上げる。
「銀ちゃんは蕎麦食べに行ったアル。どこかの隠れ蕎麦屋に行ったアル」
「そうなの? 新ちゃん」
「すみません姉上。アノ人どこかの蕎麦屋に行くって。それなら姉上も誘って僕達も一緒にって言ったんですけど」
「一人で行っちゃったのね銀さん。今年は蕎麦屋と合併するつもりかしら」
「いえ。そんなことはないと思いますけど」
「きっとめっさ美味い蕎麦屋アル。銀ちゃんはケチだから本当に美味い物は独り占めするアルヨ。私達には食べさせてくれないネ」
「あらあらしょうがない銀さんねえ」
そんな人は放っておいて私達で楽しみましょとお妙は銀時がいないことを差ほど気にしていない。
「さあさあお肉が煮えましたよ。神楽ちゃんお茶碗取って。よそってあげるわ」
「キャッホォォォォ。肉だ肉。銀ちゃんいないほうがたくさん食べられていいアル」
神楽の目はお鍋の中の鶏肉に釘付け。いない銀時のことはどうでも良い。
「美味しい物を食べて、紅白を見て、新年になったら初詣に行きましょうね」
三人はにぎやかに鍋を突き出す。今年は少し奮発して水炊きだ。志村家のささやかな大晦日だった。
呼び鈴に応じて玄関に出てみれば、連れ合いが立っていた。
「なんだ銀時ではないか。今頃どうしたのだ?」
「イヤ別に。どうしたって程のことでもないンだケド」
「大晦日のこんな時間にやってくるとは。さては貴様、金を借りに来たのだな。どうしようもなくなって俺のところに来たのだな」
「イヤ違うケド」
否定したが桂は聞いちゃいない。
「家賃や飲み代の払いは溜めるなとあれ程言うたであろう。まったくおまえはだらしのない。毎年毎年懲りないやつだ」
「だァかァらァ。ちげーって言ってるだろがァァァッッッ!!!」
バシーンと黒い頭をひっぱたいた。
「何をする銀時。痛いではないか。多少の金なら融通してやろうかと思うていたのに。このような狼藉を働くならその気も失せたわ」
頭を擦りながら睨みつける桂。
「だからちげーって。借金に来たワケじゃねェって言ってンだろ」
「そうなのか?」
桂が頭を傾げた。
「そうなの。今月はぎっちり仕事して、家賃も飲み代もきれいにしましたー。だいたい金がねェのはてめェもおんなじだろ。てめェに無心なんかするかよ」
桂はうんうんと頷いた。師走の万事屋は忙しく、一年のうちで一番の稼ぎ時だ。
「それなら何用があって来たのだ? 今夜はリーダーたちと一緒ではないのか?」
銀時は癖の強い銀髪をくしゃくしゃと掻き混ぜた。
「イヤあのね。蕎麦食わせてもらいたいなーって思ってさ」
桂は目を丸くした。
「蕎麦? 年越し蕎麦のことか?」
「そう。ダメ?」
「駄目なことはないが。したが除夜の鐘が鳴ってからになるぞ」
「それでもイイから」
「ならば入るが良い」
ようやく桂の了承を取り付けた。
(蕎麦は言い訳に決まってンだろ。てめェと大晦日を過ごしたかったンだよバカヤロー)
胸の中で文句を垂れた。銀時の気持ちなんて鈍い桂は気付かない。
(気づけバカ。というか俺も素直におめェと過ごしたいって言えばいいンだケドね)
そんなことはこっ恥ずかしくて絶対に口にできなかった。
腹が減っていると言ったら、つまみと熱燗を出してくれた。
「後は勝手にやってくれ。俺は紅白を見るから忙しいのだ」
「紅白ねェ…」
「石○さ○り殿が楽しみなのだ」
「ナニ言ってンだ。今年は『ま○恋』の坂○○美だろ?」
「何を言うか。さ○り殿だ。彼女の『天○○越え』だろう」
石○さ○りはバツ一子持ちの熟女だ。年増女が持つ色気に溢れている。桂の好みだ。
「坂○○冬美殿も良いがまだまだ若い。もう少し年を重ねたらもっと良くなるであろう」
「へーへー。わかりましたよ」
桂の熟女好きは昔からなので、逆らうのはやめることにした。
歌はどんどん進み、石○さ○りの番になった。艶やかな声で女の情念たっぷりに歌い上げる彼女に桂は聞き惚れている。歌が終わるとほうと息をついた。
「やはり良いな。さ○り殿は」
うっとりとしている様子に苦笑が漏れた。
そして次の赤組の歌い手は坂○○美。大ヒットしている「また○に○してる」を歌い出す。 銀時は歌を聞きながら、テレビ画面に映る歌詞を見ていた。
(なんかこの歌って…。今まであんま良く歌詞聞いたことなかったケド。なんか、俺達のことみてェだな…)
傷つきたくさんのものを失っても君がいる。一度別れて再び出会い、そして以前よりも想いが深いことに気付く。
ちらと桂を見れば歌に聞き入っているようだった。歌に合わせて微かに頭が揺れている。
(ガラじゃねェか。歌に自分達のことをなぞらえるなンてよ)
それでも再会してヨリを戻した桂への想いは確かなものだ。昔のような若さに任せた激しいものではなく、じんわりと心を暖めてくれるような。自分の芯にしっかりと根ざしているような。
坂○○美の歌が終わった。
「良い歌であったな。○美殿も良い歌い手だ。歌詞が胸に沁みた。聞いているうちに昔のことを思い出した。まるで俺達のような…」
言いかけた言葉を切った。
「なんだよ。まるで俺達がナニ?」
「否。なんでもない」
桂は口を結びまたテレビのほうを向いてしまったが、彼が自分と同じ事を思っていたことはわかった。言うのが照れ臭かったのだろう。歌に自分達のことをなぞらえて共感した事を。
(ヤレヤレ。考えてることまで同じですか)
銀時は苦笑した。でも悪い気分ではない。自分が桂を大切な連れ合いだと思っているように、桂もそう思ってくれている。桂に会えて良かったと思った。
紅白歌合戦が白組勝利で終わった後、桂は年越し蕎麦の支度を始めた。テレビからは除夜の鐘が聞こえ始める。
「待たせたな銀時。蕎麦ができたぞ」
盆に湯気をたてた丼を載せて桂が居間に戻ってきた。
「さあ年越し蕎麦だ。食べると良い」
「サンキューヅラ。そんじゃ早速」
蕎麦を食べさせてと言い訳して桂の家にやってきたが、ちょうど腹も空いてきたのでありがたかった。
「お。お揚げ乗ってンじゃん」
蕎麦に葱だけだと思っていたら、色良い油揚げが乗っている。
「昼間に煮含めておいたのだ。年越し蕎麦だから贅沢して二枚用意したが、おまえに一枚やろう」
「お揚げ二枚が贅沢なんですかコノヤロー」
「そうだぞ。二枚は贅沢だ」
どんだけ質素倹約なんだと思いながら、桂手作りの蕎麦をすすった。
「銀時。蕎麦を食べたら初詣に行こう」
「ハイィィ?」
「過ぎ行く年の無事を感謝し、新しい年の幸を祈願するのだ」
「イヤイヤイヤ。だって寒ィじゃん。朝ンなってから、いやあったけェ昼間に行く方が良くネ?」
「なにを言うか。この寒さの中詣でるから良いのであろう。見も心も引き締まる」
「エエ~~」
蕎麦を食べたら床入りを目論んでいたのだ。肌を合わせ抱きしめて布団の中でぬくぬくと。
「良いな銀時。初詣に行く」
桂の考えは変わらないらしい。銀時はひっそりと溜息をついた。
「わーったよ。蕎麦食ったら初詣に行きますー」
「それで良い」
桂は満足そうに笑った。
蕎麦を食べているうちに、時報が午前零時を告げた。
「おお。年が明けたな」
桂は蕎麦を食べる手を止めると箸を置いて居ずまいを正した。
「銀時。明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
新年の挨拶をされて銀時も胡坐をかいていたのを直した。
「明けましておめでとさん。こっちこそよろしくな」
こんな風に二人で、新年の挨拶を交わせるなんて嬉しいことではないか。
「さあ銀時。さっさと蕎麦を食べるのだ初詣に行くぞ」
銀時は二人でいられることに浸っていたが、桂は初詣に心が飛んでいるらしい。
「チェ。なんだよ情緒のねェヤツだな」
銀時の想いはまるで気付かない桂は早く早くと急かす。
「早くするのだ銀時。大江戸神社では先着で甘酒を振舞ってくれると聞いたぞ」
「甘酒だってェ。なんだよそれを早く言えよ」
残っていた蕎麦を大急ぎですすると、ずずっと汁を飲みほした。
「行くぞヅラ。初詣だ」
「ヅラじゃない。桂だ。現金なやつめ。甘酒と聞いたら行く気になりおって」
「だーって甘酒じゃん。ただで飲めるじゃん。オラさっさとしろよヅラ。はやくしねェと甘酒飲み損まっちまう」
「ヅラじゃない桂だと言うておろう。今年も直す気がないのか貴様は」
「だーっておめェはヅラじゃん。ヅラ以外の何者でもねェじゃん。それともなにか? おめェヅラやめる気か?」
「俺はヅラをやめる気はない。否、間違えた。ヅラではなく桂だと言うておるのだ」
「へーへー。つまりヅラだろ」
言い合いをしながら二人は外出の用意をする。綿入半纏を着てマフラーを巻き、二人はまだ暗い外へ出て行った。
「良い年になると良いな」
「そだね」
吐く息も白い寒さの中、肩を並べて歩き出した。
途中伏字が多くてすみません。一応念のため。
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