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今更ですが、二年後編で小噺です。二年後編はいろいろ衝撃でしたが、やっぱりおもしろい話でした。

つづきからどうぞ。


拍手ありがとうございました。続きもがんばります。



寄生型エイリアン、キューサイネトルの騒ぎが一段落して、二年後ではないいつもの日常が戻ってきてしばらくたったころ。桂が万事屋を訪れた。桂が来たことがわかった銀時は玄関にすっ飛んで行った。ガラララと扉を開けると綺麗な澄まし顔をした連れ合いが立っていた。銀時は桂を頭の上からつま先までしげしげと見た。その姿はいつもと変わらない。着流しに羽織りも長い黒髪も涼やか黒い瞳も。どこも変わっていない銀時の桂だ。

「邪魔をしても良いか? 銀時」

銀時は返事の代わりに手を伸ばし、桂の股間をがっと握った。

「ぎっぎんときっ!!??」

玄関先でいきなり股間を握られた桂は硬直した。

「なっ何をしているのだ貴様」

問うても銀時は聞いちゃいない。座り込んで目線を桂の股間に合わせるとぶつぶつ言いながら形を確かめるように握り続ける。

「ウン。ちゃんと付いてるな。これは紛れもなく男の象徴チンコだな。ああ良かった…」

不躾にも人の大事なところをにぎにぎして離さない銀時に怒りが腹の底から込み上げた。

「何を盛っておるのだ貴様はァァァァッッッ!!!」
「ブベラッッッ!!!」

桂は思いっきり銀時の腹を蹴り上げた。銀時は廊下の上に吹っ飛んだ。




「だァかァらァ。おめェの大事なモンがちゃんと付いてるかどうか確認してたんだって」

ああ痛ェ。思いっきり蹴りやがって内臓が飛び出すかと思ったじゃねェかとブツブツ。居間の椅子に向かい合って座り、桂はしかめっ面で銀時の言い訳を聞いている。

「付いているに決まっているであろう。貴様俺と何年の付き合いだと思っているのだ。それにいつも見ているであろう。今更確認する必要はなかろう。それとも俺がおなごだとでも思うていたのか?」
「イヤイヤイヤ。ヅラ君は立派な男子ですよ。ガキン頃から今までもずっと男ですよ」 
「ヅラ君じゃない。桂だ。わかっているならもう妙なことはするな」

桂はむすっと押し黙った。
確かに桂は性別男。股間に付いているものも付いてるし、気性も男子そのもの。子供の頃からいっしょに風呂に入ったり、着替えをしたりで桂は女ではないことは重々承知している。

(でもよ。こないだ女になってたじゃねーか…)

キューサイネトルに取り付かれた桂は、あろう事か女性になっていた。

「おめェさ。イボンなってた時のこと全然憶えてねェの?」

銀時の身近で寄生されなかったのは銀時だけ。そして神楽も新八もイボになっていたときの記憶がない。皆二年後だ二年後だと騒いでいたのも忘れて普通に過ごしている。

「キューサイネトルであろう。憶えておるぞ。あれに寄生されるとは俺も不覚であった」

桂がくううと唇をかむ。

「まあアレはエイリアンだからね。おめェが浄化できるのはウイルスだろ。取り付かれたってしょーがねーよ」

しかも桂には向上心がある。子供の頃から努力を怠らなかった。今も攘夷という成し遂げようとしているものがある。そこにつけこまれたのだろうが。

「だけどなんで女になってたワケ? てめェの向上心だったら、幕府を倒して将軍に成り代わるとかその辺じゃね?」
「否。俺の向上心はもっと身近なことだったようだ。つまりおなごになっておまえの子を産みたいという…」

バシンと桂の頭にハリセンが入った。

「何をする銀時。痛いではないか」
「何をするじゃねー。俺の子を産みたいとかウソこけ。てめェは九兵衛とのキャラかぶりを気にしてとったどーしてたンじゃねェか」
「む。確かに九兵衛殿とはかまっ娘倶楽部のエースを取り合ったが、俺がおなごになったのは、純粋に貴様に子を産んでやりたいと思うたからだぞ」
「え…。そなの?」

なんだか目のやり場に困ってうろうろと視線をさ迷わせる。銀時だって良い歳だ。子供がいたっておかしくない。今、子供がほしいとは思わないが、普通に嫁をもらって子供を作って普通の家庭を営んでも良いのだ。

「俺と付き合っていても子はできぬ。おまえは家庭も持てず父親にもなれぬ。だから俺がおなごになればそれができるかと思うた。おれがチョメチョメするのはおまえだけだからな」

そういえば、イボヅラ子は子供を産んでいたっけ。誰が父親なのか良くわからない、ゴリラ近藤の子なのか本物のゴリラの子なのかわからない赤ん坊を産んでいたっけ。

「じゃあよ。なんで産んだのがゴリラの子なんだよ。なんで俺の子じゃなかったンだよ」
「イボヅラ子は寂しい男に弱いらしい。情の深いおなごなのだな。酒場で荒れて飲んだくれている近藤を放って置けなかったようだ。それでつい…」
「ついチョメってゴリ子を産んじまったワケか。銀サンだって寂しい男だったンですケド。ヤムチャ銀さんは女を寝取られたって設定だったンだから」
「すまないな銀時。でもおまえの場合はキューサイネトルに寄生されていたわけではなかろう。どうやらイボには同種かそうでないかを見分ける力があったようだ。それでおまえには惹かれなかったようだな」

すまなそうに言う桂。銀時は癖の強い髪をかき回した。

「なあヅラよォ。俺はおめェが女じゃなくたっていいンだよ。俺達じゃどんなにがんばったって子供ができないのは承知の上でおめェと付き合ってンだからよ。だから俺の子供を産めないとか俺が父親になれないとか、これから考えたり言ったりするんじゃねェぞ。俺は男のおめェが良くてツレにしてるンだからな」
「銀時…」

桂が目を見張った。なんだか照れるなと頬をうっすら染める。
銀時は立ち上がると桂の隣に移った。

「ったくてめェは禄でもねェことばっか考えやがって。電波妄想もたいがいにしろよ。攘夷はどうした攘夷は。くだらねェこと考えるより、そっちを考えた方がいいンじゃねェか?」
「そうだな。おまえの言うとおりだ」

桂が薄く微笑んだ。その顔を綺麗だと思いながら彼の手を握り締める。

「もう女になろうなんて考えるなよ。俺はてめェがいいンだからな。わかったかバカヅラ」
「バカヅラじゃない。桂だ」

銀時の顔が近づいて、しっとりと唇を合わせた。




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