日々諸々
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ゴニンジャーその後で小噺です。続きからどうぞ。
最近小噺ばかりですみませんです。
拍手ありがとうございました。一手間かけてくださるお気持ちがとても嬉しいです。
最近小噺ばかりですみませんです。
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忍戦隊ゴニンジャーを結成して奉行所で一騒動あってから一週間後、桂が万事屋にやってきた。仕事がなくて、新八も神楽もいなくて暇を持て余していた銀時は、桂の来訪を内心喜びながらも、表面はいつも通り悪態をつく。
「あー。疫病神がやってきたよ。なんだよ袋なんか下げちゃって。今度は何で何を釣ろうってンだよ。そうはいかねェからな。そうそうてめェの策略に引っかかってたまるかってンだコノヤロー」
文句を言いながらも目は袋に釘付け。
「先だってはすまなかったな銀時。俺の勘違いで騒動に巻き込んでしまった。これは詫びと言ってはなんだが俺の気持ちだ。不三家のシュークリームを持ってきた」
不三家のシュークリームと聞いて銀時の目が輝いた。
「ンじゃまあ。シュークリームに免じて許してやっか」
「かたじけない」
客である桂にお茶を入れさせて、早速シュークリームを食べ始める銀時。桂は向かい側に座り、ゆっくりとお茶をすすっている。
「美味ェな。さすがに不三家のシュークリームだ」
「おい。食べ過ぎるなよ銀時。子らの分も残しておいてやれ」
二つ、三つと食べていくのに釘を刺した。
「わーってるって。これで終わりにするからよ。それより結局ペンギンオバケは見つかったワケ?」
「ペンギンオバケじゃない。エリザベスだ」
「へーへー。そのザベスは見つかったの?」
桂は云と頷いた。
「あれから三日後に戻ってきた」
「ふーん。そりゃ良かったじゃん。仲直りもしたワケ? なんだっけ確か蕎麦のお揚げを取り合ってケンカしたンだっけ?」
「面目ない。あそこは俺が退いてエリザベスに譲るべきであった。したが蕎麦のことになると俺も大人気なくなってしまってな。エリザベスと話し合ってこれからは半分こにすることにした。そうすれば喧嘩にもなるまい」
神妙な顔で話す桂に呆れてしまった。
「あのさー。蕎麦のお揚げってそんなに話し合ったりケンカしたりするモンなの?」
どうだっていいことじゃねェの? と言うと桂がきっと睨みつけた。
「どうでも良くない。これは俺たち蕎麦好きにとっては重大且つ重要なことなのだ。だから話し合ってお互い納得いくようにしておかなければならないのだ。俺はお揚げのことで喧嘩するのも、いなくなったエリザベスを探すのもこりごりだ」
こぶしを握り締めて力説する桂。
「エリザベスに出て行かれて俺がどれ程寂しかったかおまえにわかるか?」
「イヤ。わかンねーケド」
「エリザベスを探して俺がどれ程江戸の町をさ迷ったかおまえにわかるか?」
「イヤイヤイヤ。わかンねーケド」
「足を怪我して松葉杖を頼りにそれはそれは大変だったのだ。その苦労がおまえにわかるか?」
「だァかァらァ。わかンねーって言ってンだろーがァァァッッッ!!!」
くどくど話し続ける桂にキレて銀時は黒い頭を引っぱたいた。
「痛っ!!」
桂が頭を押さえる。
「何をする銀時。痛いではないか」
「てめェがくどくどうっせーからだろ」
「貴様。先に働いた暴行を忘れたか。あの時の頭の傷がようやく治ったところなのだぞ。それに足が不自由だったのも、貴様らの暴行のせいだ。治療費、慰謝料を請求されても否やは言えぬのだぞ」
エリザベス救出大作戦が桂の勘違いで終わった時、骨折り損をしたと皆で桂を袋叩きにしたのだ。しかしそれもこれも桂が悪いのだ。桂のせいで騒動に巻き込まれ命の危険に晒されたのだ。仕返ししたって文句は言えまい。まあ少しやり過ぎたかなとも思ったが、見かけによらず頑丈な桂はボコボコにされても自分で立って歩いて帰ったのだから、今更治療費だの慰謝料だのと言われても聞く耳など持つものか。
「というより、こっちが迷惑料貰いたいくらいなんだけど。あんな恥ずかしいカッコするわ、ゴミ収集車に収集されるわ、言いがかり付けられて殺されそうになるわ、とんだ無駄骨折らせやがって」
「……やはり収集されていたのだな。貴様」
「あ…」
あの時はチンピラに絡まれたって誤魔化したんだった。つい口が滑って墓穴を掘ってしまった。
「ンなこたァどうでもいいンだよ。っつーか迷惑料だ迷惑料。てめェが変な話持ち込まなければ俺が収集されることもなかったンだよ。っつーかあれはてめェからの依頼だろ。依頼料寄越せ」
まくしたてる銀時に桂の眉が寄る。
「だからこうして菓子を持ってきたではないか。俺とて無駄骨を折らせて悪かったと思っているのだ」
「これェ?」
銀時が素っ頓狂な声を上げた。
「これっぽちの菓子で迷惑料と依頼料の代わりィ? 足らねェよ。ぜんっぜん足らねェからね。菓子持ってくンなら一年分持ってこいよ」
「む。それなら俺の治療費はどうなるのだ。不問にしてやろうと思うているのに」
「ンなもん知るかッッ」
「それなら俺もこれ以上貴様にはびた一文払う気はないっっ」
ぎっと睨み合う二人。
「ふん」
桂は鼻を鳴らすと残っていたお茶をずずっと飲み干した。銀時はシュークリームをつかむともさもさ食い始める。
連れ合いの眉間に寄った皺を見ながら、やっぱりやり過ぎたなあと思った。桂は相当怒っている。臍も曲げている。一度曲がった臍がなかなか戻ってこないことも知っている。暇を持て余していたところに桂が来てくれて本当は嬉しいのだ。夜までいさせて床を共にできればとも思う。
(仕方ねェか…)
このままでは帰ってしまうだろう。まったく面倒くさいやつだが仕方がない。銀時は折れることにした。
「なあヅラよォ…。悪かったよ。俺らも少しやり過ぎた。迷惑料も依頼料も冗談だから。不三家のシュークリーム持って来てくれただけで充分だから」
猫撫で声で話すとちらりと視線を寄越す。
「俺の慰謝料はどうなるのだ?」
「それは今晩たっぷり払ってあげるから。がっつりねっとりしっぽりね」
「おまえの体など今更珍しくもない。それで払いになると思っているのか?」
「エエエ? その言い方ひどくない? 俺金ないのよ。身一つしかないのよ。それをそんな風に言うなんてあんまりじゃないヅラ君」
情けない声に桂がぷぷっと噴き出した。
「ヅラ君じゃない。桂だ。仕方あるまい。おまえに金がないのは百も承知だ。今回はおまえの身を貰っておくことにしよう」
貰われちゃうのはおまえのほうだけどねと思いながら、やっと桂の機嫌が直り銀時は一安心。夜の約束もとりつけて満足。早く夜にならねェかなと気持ちがはやる。
「で結局ペンギンオバケはどこに行ってたんだよ」
聞いたら桂の視線が泳いだ。
「……俺にも良くわからぬ……。エリザベスと良く似たものを見かけたがあれは別人であった」
うらぶれた長屋で見たエリザベスに良く似たステファン。しかし彼には妻も子もいた。エリザベスに妻子がいるなど聞いたことがない。第一エリザベスは坂本が宇宙から連れてきてプレゼントしてくれたのだ。地球にこの江戸に妻子がいるはずがない。
「それから丸二日江戸中を探し回った。したがどうしても見つからなくてな。そうしたら三日目にひょっこりと帰ってきたのだ」
「ふうん…」
怪我をした足でそんなに必死に探し回ったのか。あの得たいの知れぬペンギンオバケはそれほど桂に想われているのか。なんだか苦いものが込み上げてくる。なんだか胸の内がざわめく。
「あのさーヅラ」
「なんだ? 銀時」
桂が黒目がちの目で見つめてくる。
「あのさー。もしもさあ、もしもだよ。もし俺がさあ…」
そこで言葉を切った。
「もし俺がどうしたのだ?」
首を傾げて聞き返す桂の髪がさらりと揺れる。その髪に触れたいと思いながら、もう一度口を開いた。
「もしも俺がさあ。もしも…」
「どうしたのだ銀時? 随分と歯切れが悪いな。さてはまた禄でもないことを企んでいるな」
「禄でもねェことを企むのはてめェだろ。っつーかもういい。なんでもねェ」
銀時はむすっと口を結んだ。なんだおかしなやつだなと憮然とする顔を見ながら考えた。
これは言わない方が良い。いや、言ってはいけない言葉だ。言えば桂の昔の傷に触れることになるだろう。どうやって彼が乗り越えたのか知らない。どうやって傷を癒したのかも知らない。もしかすると今でも傷ついたままなのかもしれない。聞き出す勇気もない。それは銀時の行いの結果だ。銀時が付けた傷だ。
(聞けるワケねェよな…。もし俺がいなくなったらペンギンみたいに必死で探してくれンのかなんてよ…)
かつて桂の前から行方をくらませた自分が今更。
「あー。疫病神がやってきたよ。なんだよ袋なんか下げちゃって。今度は何で何を釣ろうってンだよ。そうはいかねェからな。そうそうてめェの策略に引っかかってたまるかってンだコノヤロー」
文句を言いながらも目は袋に釘付け。
「先だってはすまなかったな銀時。俺の勘違いで騒動に巻き込んでしまった。これは詫びと言ってはなんだが俺の気持ちだ。不三家のシュークリームを持ってきた」
不三家のシュークリームと聞いて銀時の目が輝いた。
「ンじゃまあ。シュークリームに免じて許してやっか」
「かたじけない」
客である桂にお茶を入れさせて、早速シュークリームを食べ始める銀時。桂は向かい側に座り、ゆっくりとお茶をすすっている。
「美味ェな。さすがに不三家のシュークリームだ」
「おい。食べ過ぎるなよ銀時。子らの分も残しておいてやれ」
二つ、三つと食べていくのに釘を刺した。
「わーってるって。これで終わりにするからよ。それより結局ペンギンオバケは見つかったワケ?」
「ペンギンオバケじゃない。エリザベスだ」
「へーへー。そのザベスは見つかったの?」
桂は云と頷いた。
「あれから三日後に戻ってきた」
「ふーん。そりゃ良かったじゃん。仲直りもしたワケ? なんだっけ確か蕎麦のお揚げを取り合ってケンカしたンだっけ?」
「面目ない。あそこは俺が退いてエリザベスに譲るべきであった。したが蕎麦のことになると俺も大人気なくなってしまってな。エリザベスと話し合ってこれからは半分こにすることにした。そうすれば喧嘩にもなるまい」
神妙な顔で話す桂に呆れてしまった。
「あのさー。蕎麦のお揚げってそんなに話し合ったりケンカしたりするモンなの?」
どうだっていいことじゃねェの? と言うと桂がきっと睨みつけた。
「どうでも良くない。これは俺たち蕎麦好きにとっては重大且つ重要なことなのだ。だから話し合ってお互い納得いくようにしておかなければならないのだ。俺はお揚げのことで喧嘩するのも、いなくなったエリザベスを探すのもこりごりだ」
こぶしを握り締めて力説する桂。
「エリザベスに出て行かれて俺がどれ程寂しかったかおまえにわかるか?」
「イヤ。わかンねーケド」
「エリザベスを探して俺がどれ程江戸の町をさ迷ったかおまえにわかるか?」
「イヤイヤイヤ。わかンねーケド」
「足を怪我して松葉杖を頼りにそれはそれは大変だったのだ。その苦労がおまえにわかるか?」
「だァかァらァ。わかンねーって言ってンだろーがァァァッッッ!!!」
くどくど話し続ける桂にキレて銀時は黒い頭を引っぱたいた。
「痛っ!!」
桂が頭を押さえる。
「何をする銀時。痛いではないか」
「てめェがくどくどうっせーからだろ」
「貴様。先に働いた暴行を忘れたか。あの時の頭の傷がようやく治ったところなのだぞ。それに足が不自由だったのも、貴様らの暴行のせいだ。治療費、慰謝料を請求されても否やは言えぬのだぞ」
エリザベス救出大作戦が桂の勘違いで終わった時、骨折り損をしたと皆で桂を袋叩きにしたのだ。しかしそれもこれも桂が悪いのだ。桂のせいで騒動に巻き込まれ命の危険に晒されたのだ。仕返ししたって文句は言えまい。まあ少しやり過ぎたかなとも思ったが、見かけによらず頑丈な桂はボコボコにされても自分で立って歩いて帰ったのだから、今更治療費だの慰謝料だのと言われても聞く耳など持つものか。
「というより、こっちが迷惑料貰いたいくらいなんだけど。あんな恥ずかしいカッコするわ、ゴミ収集車に収集されるわ、言いがかり付けられて殺されそうになるわ、とんだ無駄骨折らせやがって」
「……やはり収集されていたのだな。貴様」
「あ…」
あの時はチンピラに絡まれたって誤魔化したんだった。つい口が滑って墓穴を掘ってしまった。
「ンなこたァどうでもいいンだよ。っつーか迷惑料だ迷惑料。てめェが変な話持ち込まなければ俺が収集されることもなかったンだよ。っつーかあれはてめェからの依頼だろ。依頼料寄越せ」
まくしたてる銀時に桂の眉が寄る。
「だからこうして菓子を持ってきたではないか。俺とて無駄骨を折らせて悪かったと思っているのだ」
「これェ?」
銀時が素っ頓狂な声を上げた。
「これっぽちの菓子で迷惑料と依頼料の代わりィ? 足らねェよ。ぜんっぜん足らねェからね。菓子持ってくンなら一年分持ってこいよ」
「む。それなら俺の治療費はどうなるのだ。不問にしてやろうと思うているのに」
「ンなもん知るかッッ」
「それなら俺もこれ以上貴様にはびた一文払う気はないっっ」
ぎっと睨み合う二人。
「ふん」
桂は鼻を鳴らすと残っていたお茶をずずっと飲み干した。銀時はシュークリームをつかむともさもさ食い始める。
連れ合いの眉間に寄った皺を見ながら、やっぱりやり過ぎたなあと思った。桂は相当怒っている。臍も曲げている。一度曲がった臍がなかなか戻ってこないことも知っている。暇を持て余していたところに桂が来てくれて本当は嬉しいのだ。夜までいさせて床を共にできればとも思う。
(仕方ねェか…)
このままでは帰ってしまうだろう。まったく面倒くさいやつだが仕方がない。銀時は折れることにした。
「なあヅラよォ…。悪かったよ。俺らも少しやり過ぎた。迷惑料も依頼料も冗談だから。不三家のシュークリーム持って来てくれただけで充分だから」
猫撫で声で話すとちらりと視線を寄越す。
「俺の慰謝料はどうなるのだ?」
「それは今晩たっぷり払ってあげるから。がっつりねっとりしっぽりね」
「おまえの体など今更珍しくもない。それで払いになると思っているのか?」
「エエエ? その言い方ひどくない? 俺金ないのよ。身一つしかないのよ。それをそんな風に言うなんてあんまりじゃないヅラ君」
情けない声に桂がぷぷっと噴き出した。
「ヅラ君じゃない。桂だ。仕方あるまい。おまえに金がないのは百も承知だ。今回はおまえの身を貰っておくことにしよう」
貰われちゃうのはおまえのほうだけどねと思いながら、やっと桂の機嫌が直り銀時は一安心。夜の約束もとりつけて満足。早く夜にならねェかなと気持ちがはやる。
「で結局ペンギンオバケはどこに行ってたんだよ」
聞いたら桂の視線が泳いだ。
「……俺にも良くわからぬ……。エリザベスと良く似たものを見かけたがあれは別人であった」
うらぶれた長屋で見たエリザベスに良く似たステファン。しかし彼には妻も子もいた。エリザベスに妻子がいるなど聞いたことがない。第一エリザベスは坂本が宇宙から連れてきてプレゼントしてくれたのだ。地球にこの江戸に妻子がいるはずがない。
「それから丸二日江戸中を探し回った。したがどうしても見つからなくてな。そうしたら三日目にひょっこりと帰ってきたのだ」
「ふうん…」
怪我をした足でそんなに必死に探し回ったのか。あの得たいの知れぬペンギンオバケはそれほど桂に想われているのか。なんだか苦いものが込み上げてくる。なんだか胸の内がざわめく。
「あのさーヅラ」
「なんだ? 銀時」
桂が黒目がちの目で見つめてくる。
「あのさー。もしもさあ、もしもだよ。もし俺がさあ…」
そこで言葉を切った。
「もし俺がどうしたのだ?」
首を傾げて聞き返す桂の髪がさらりと揺れる。その髪に触れたいと思いながら、もう一度口を開いた。
「もしも俺がさあ。もしも…」
「どうしたのだ銀時? 随分と歯切れが悪いな。さてはまた禄でもないことを企んでいるな」
「禄でもねェことを企むのはてめェだろ。っつーかもういい。なんでもねェ」
銀時はむすっと口を結んだ。なんだおかしなやつだなと憮然とする顔を見ながら考えた。
これは言わない方が良い。いや、言ってはいけない言葉だ。言えば桂の昔の傷に触れることになるだろう。どうやって彼が乗り越えたのか知らない。どうやって傷を癒したのかも知らない。もしかすると今でも傷ついたままなのかもしれない。聞き出す勇気もない。それは銀時の行いの結果だ。銀時が付けた傷だ。
(聞けるワケねェよな…。もし俺がいなくなったらペンギンみたいに必死で探してくれンのかなんてよ…)
かつて桂の前から行方をくらませた自分が今更。
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