日々諸々
H21年1月30日登録
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一昨日のアニメ銀ちゃんで、土方さんと桂の衝突スパークがあまりにすご
かったので刺激を受けて小噺です。登場人物はヒッジーとヅラのお二人で
す。続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。拍手をいただくとよーしなんか書こう!
とやる気が出てきます。いつもありがたいです。
かったので刺激を受けて小噺です。登場人物はヒッジーとヅラのお二人で
す。続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。拍手をいただくとよーしなんか書こう!
とやる気が出てきます。いつもありがたいです。
騒動の首謀者がわかったらしく皆が屋上へ向う。
集団の最後尾に付いて走りながら、桂は注意深く観察した。みんな上に意
識が集中していて後を振り返ることがないことを見てとると、ぴたりと足
を止めた。それを待っていたかのようにすぐ前を走っていたエリザベスも
止まった。白い巨体がこちらを向く。目で合図を送るとこくりと頷いた。
そのまま二人は階段を降り始めた。
今回の馬鹿騒ぎの首謀者が誰なのか、知興味がないと言えば嘘になる。し
かし最後まで付き合う謂れもない。はなから人気投票はどうでも良い事だ
った。首謀者が誰なのかは今夜にでも万事屋へ行って、銀時から聞けば良
い。せっかくのチャンスなのだ。ここで逃げない手はない。
一階まで降りてロビーを抜けるとドアを開けてそっと顔を出して外を窺っ
た。往来には人が溢れていたが、もうつかみ合いなどはしていない。踊ら
されていた事にようやく気が付いて、人々はぽかんと気の抜けた顔をして
いる。
「行こうかエリザベス」
『はい。桂さん』
二人はラブホテルを出ると雑踏の中に紛れ込んだ。すぐに男のものらしい
悲鳴が聞こえ、その中の一つが聞き覚えのあるものだったように思った
が、今は逃げるが先と足を運んだ。
ざわざわしていた人々も日常へと戻り始め道も歩きやすくなったころ、後
から猛然と近づいてくる気配があった。
「かァつらァァァァァァァ!!!!」
毎度お馴染みの叫び声に自然と眉が寄る。
「待ちやがれェェェェ!! 桂ァァァァーーーーー!!」
振り向いてみると土方がすごい形相で走ってくるのが見えた。
「ちっ。芋侍めが。もう嗅ぎつけたのか」
口の中で文句を言う。
「かァつらァ。逃げるたァイイ根性してるじゃねェかてめェ」
追いついた土方は息を切らせながら言った。
「さすがに狗だな。良く効く鼻だ」
「うっせーよ」
桂の嫌味に悪態をつく。
「どさくさに紛れてトンズラするてめェの方がよっぽどいい神経してるじ
ゃねェか。共闘した仲だろ。黙って消えるなんて水くせェことするんじゃ
ねェよ」
「確かに休戦はしたがそれはあくまであの場でのこと。最後まで貴様に付
き合うとは一言も言っておらん。当然連行されるつもりもない」
土方も桂があのまま大人しく捕まってくれるなどとは思っちゃいない。だ
から屋上へと向かいながらも桂の動向を気にしていたのだ。首謀者が山崎
だとわかりケリをつけた後、桂がいないことに気が付いてすぐに追いかけ
た。こうやって見つけられたのは偶然、運が良かっただけだ。
土方は桂が気になっていた。職務とは別のところで気になる存在なのだ。
今回の騒動に乗じてほんの少し距離を詰められたような気がしていたが、
それは思い込みだったらしい。休戦して共闘をした相手は、用がなくなれ
ば挨拶もなしにいなくなった。
黒くて長い髪、澄んだまっすぐな瞳、華奢だが俊敏な体。相当な剣の使い
手。どれをとっても自分を惹き付けてやまないのに、結局は追う者と追わ
れる者、幕臣と反逆者、その構図は変わらない。
「付け加えておけば俺は貴様とお近づきになるつもりもない」
容赦のない硬質な声に胸が疼く。どうしてこんな想いを彼に抱いてしまっ
たのだろう。
思わず一歩踏み込めば、相手はその分半身を引いた。桂をかばうようにエ
リザベスがずいっと前に出る。
「良いエリザベス。こいつは何もせぬ」
「見くびられたもんだな。てめェをとっ捕まえに来たとは思わねぇのか
よ」
「思わぬな。局長や一番隊隊長を連れず一人で来たことがその証拠だ」
お見通しかよおもしろくねぇと内心舌打ちをする。
「人気投票などに踊らされて右往左往している貴様に捕まるものか」
それを聞いてかっと頭に血が昇った。
「俺だってなあ。人気投票なんて興味なかったんだよ。でも真選組の面子
だってあんだよ。万事屋には負けてらんねえんだ」
瞬きする間もなかった。気が付いた時には桂が懐にいて胸倉をつかまれて
いた。ぐっと顔を近づけて囁かれた。
「そう易々と蹴落とせるはずがなかろう。百年早いわ若造め。万事屋を甘
く見るな」
「なに?」
どんっと体を突き放された。どういう意味だと問いただそうとした時に
は、桂は離れたところにいた。
「桂。おめぇはやっぱり万事屋と関係があんのか?」
これまで桂が関わった騒動に万事屋の白髪天パの影が見え隠れしている。
証拠がつかめないので泳がせているが、この二人に繋がりがあることは確
信していた。それを真選組に気付かれないようにしていることも。
今日の騒動の間中、土方は桂を見ていた。ずっと見ていた。だからわかっ
た。万事屋と桂が会話はおろか視線さえ合わせていなかったことを。
あの狭い空間で少ない人数で同じ危機的状況にいたのだ。例え初対面の人
間であってもなにごとか話をするのが自然というものだろう。それを二人
は全くしていなかった。
「おめぇにとって万事屋はなんなんだ?」
土方の問いに桂はふっと笑った。
「そんなことを気にしているから俺を捕まえられないのだ。もっと精進す
ることだな。芋侍」
そう言うと桂は袂から取り出した煙玉を叩き付けた。ばふんと音がして煙
がもうもうとたちこめる。
「てめェッ。桂ッ。待ちやがれッ」
「フハハハ。さぁらばぁ」
煙を掻き分けた後には、桂もお付の白いペットの姿も当然なかった。
「クソッ…」
捕まえ損なって悔しいのだか、思いの丈が通じなくて悔しいのだか。
煙にやられた目がしばしばする。
「くそ。桂め。今度は逃がしゃしねぇぞ」
捕まえたいのか、思いの丈をわかってほしいのか。自分の気持ちをはかり
かねてむしゃくしゃする。
間近で見た彼の長い睫だけが妙に目に焼きついていた。
集団の最後尾に付いて走りながら、桂は注意深く観察した。みんな上に意
識が集中していて後を振り返ることがないことを見てとると、ぴたりと足
を止めた。それを待っていたかのようにすぐ前を走っていたエリザベスも
止まった。白い巨体がこちらを向く。目で合図を送るとこくりと頷いた。
そのまま二人は階段を降り始めた。
今回の馬鹿騒ぎの首謀者が誰なのか、知興味がないと言えば嘘になる。し
かし最後まで付き合う謂れもない。はなから人気投票はどうでも良い事だ
った。首謀者が誰なのかは今夜にでも万事屋へ行って、銀時から聞けば良
い。せっかくのチャンスなのだ。ここで逃げない手はない。
一階まで降りてロビーを抜けるとドアを開けてそっと顔を出して外を窺っ
た。往来には人が溢れていたが、もうつかみ合いなどはしていない。踊ら
されていた事にようやく気が付いて、人々はぽかんと気の抜けた顔をして
いる。
「行こうかエリザベス」
『はい。桂さん』
二人はラブホテルを出ると雑踏の中に紛れ込んだ。すぐに男のものらしい
悲鳴が聞こえ、その中の一つが聞き覚えのあるものだったように思った
が、今は逃げるが先と足を運んだ。
ざわざわしていた人々も日常へと戻り始め道も歩きやすくなったころ、後
から猛然と近づいてくる気配があった。
「かァつらァァァァァァァ!!!!」
毎度お馴染みの叫び声に自然と眉が寄る。
「待ちやがれェェェェ!! 桂ァァァァーーーーー!!」
振り向いてみると土方がすごい形相で走ってくるのが見えた。
「ちっ。芋侍めが。もう嗅ぎつけたのか」
口の中で文句を言う。
「かァつらァ。逃げるたァイイ根性してるじゃねェかてめェ」
追いついた土方は息を切らせながら言った。
「さすがに狗だな。良く効く鼻だ」
「うっせーよ」
桂の嫌味に悪態をつく。
「どさくさに紛れてトンズラするてめェの方がよっぽどいい神経してるじ
ゃねェか。共闘した仲だろ。黙って消えるなんて水くせェことするんじゃ
ねェよ」
「確かに休戦はしたがそれはあくまであの場でのこと。最後まで貴様に付
き合うとは一言も言っておらん。当然連行されるつもりもない」
土方も桂があのまま大人しく捕まってくれるなどとは思っちゃいない。だ
から屋上へと向かいながらも桂の動向を気にしていたのだ。首謀者が山崎
だとわかりケリをつけた後、桂がいないことに気が付いてすぐに追いかけ
た。こうやって見つけられたのは偶然、運が良かっただけだ。
土方は桂が気になっていた。職務とは別のところで気になる存在なのだ。
今回の騒動に乗じてほんの少し距離を詰められたような気がしていたが、
それは思い込みだったらしい。休戦して共闘をした相手は、用がなくなれ
ば挨拶もなしにいなくなった。
黒くて長い髪、澄んだまっすぐな瞳、華奢だが俊敏な体。相当な剣の使い
手。どれをとっても自分を惹き付けてやまないのに、結局は追う者と追わ
れる者、幕臣と反逆者、その構図は変わらない。
「付け加えておけば俺は貴様とお近づきになるつもりもない」
容赦のない硬質な声に胸が疼く。どうしてこんな想いを彼に抱いてしまっ
たのだろう。
思わず一歩踏み込めば、相手はその分半身を引いた。桂をかばうようにエ
リザベスがずいっと前に出る。
「良いエリザベス。こいつは何もせぬ」
「見くびられたもんだな。てめェをとっ捕まえに来たとは思わねぇのか
よ」
「思わぬな。局長や一番隊隊長を連れず一人で来たことがその証拠だ」
お見通しかよおもしろくねぇと内心舌打ちをする。
「人気投票などに踊らされて右往左往している貴様に捕まるものか」
それを聞いてかっと頭に血が昇った。
「俺だってなあ。人気投票なんて興味なかったんだよ。でも真選組の面子
だってあんだよ。万事屋には負けてらんねえんだ」
瞬きする間もなかった。気が付いた時には桂が懐にいて胸倉をつかまれて
いた。ぐっと顔を近づけて囁かれた。
「そう易々と蹴落とせるはずがなかろう。百年早いわ若造め。万事屋を甘
く見るな」
「なに?」
どんっと体を突き放された。どういう意味だと問いただそうとした時に
は、桂は離れたところにいた。
「桂。おめぇはやっぱり万事屋と関係があんのか?」
これまで桂が関わった騒動に万事屋の白髪天パの影が見え隠れしている。
証拠がつかめないので泳がせているが、この二人に繋がりがあることは確
信していた。それを真選組に気付かれないようにしていることも。
今日の騒動の間中、土方は桂を見ていた。ずっと見ていた。だからわかっ
た。万事屋と桂が会話はおろか視線さえ合わせていなかったことを。
あの狭い空間で少ない人数で同じ危機的状況にいたのだ。例え初対面の人
間であってもなにごとか話をするのが自然というものだろう。それを二人
は全くしていなかった。
「おめぇにとって万事屋はなんなんだ?」
土方の問いに桂はふっと笑った。
「そんなことを気にしているから俺を捕まえられないのだ。もっと精進す
ることだな。芋侍」
そう言うと桂は袂から取り出した煙玉を叩き付けた。ばふんと音がして煙
がもうもうとたちこめる。
「てめェッ。桂ッ。待ちやがれッ」
「フハハハ。さぁらばぁ」
煙を掻き分けた後には、桂もお付の白いペットの姿も当然なかった。
「クソッ…」
捕まえ損なって悔しいのだか、思いの丈が通じなくて悔しいのだか。
煙にやられた目がしばしばする。
「くそ。桂め。今度は逃がしゃしねぇぞ」
捕まえたいのか、思いの丈をわかってほしいのか。自分の気持ちをはかり
かねてむしゃくしゃする。
間近で見た彼の長い睫だけが妙に目に焼きついていた。
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