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WJ28号から小噺です。ヅラが可愛かったのでなにか書きたいなーと思っていたんですけれど、新しいCMを見たら思いつきました。

未読の方はネタバレになりますのでご注意を。続きからどうぞ。


拍手ありがとうございました。話を気に入って拍手をしてくださることは励みになっております。いつもありがたいです。



ある日ある時、押し掛け女房ならぬ押し掛けケータイがやってきた。


「リィングディンドンリィングディンディンドン。リィングディンドンリィングディンディンドン」

頭を振って変な歌を歌っているバカが一人。
「なンなの? おめェ。ナニやってンのおめェ。今度はどんなオカシナ電波を受信したんだよ。ヅラ」
「ヅラじゃない。桂だ。ん? 違った。ケータイだ」
またワケのわかンねェことを言い出したよ。
「夢を見たのだ。汝ケータイとなりて世の人の役に立つようにとお告げがあったのだ」
「ハイィィ?」
「それから俺は必死に修業をした。立派なケータイになるために厳しい修業を積んだのだ」
ケータイになるための修業ってナニ?
「無事にケータイの極意を会得した俺は、ケータイとしての役目を果たすように仙人様から人間界に遣わされたのだ」
ケータイの極意ってナニ? 仙人様ってナニ? ますますわかんねーよ。
「それで? なんで俺ンところにいるンだよ」
良くぞ聞いてくれましたとばかりにずびしと指を指したヅラ。いやケータイ?
「俺はおまえのケータイになることに決めたのだ。これからおまえの役に立つケータイになることを約束しよう。よろしく頼むぞ」
スパーンとヅラいやケータイの頭をはたいてやった。
「何をする銀時。痛いではないか。強い衝撃を与えると壊れてしまうぞ」
「なにをするじゃねー。なんだって勝手に俺のケータイになるって決めてンだよ。俺はケータイなンかいらねェっつの」
「遠慮するな銀時。俺は何時如何なる時もおまえの傍にいて、おまえを見守っていよう」
「そんなことしてくれなくて結構なンですケド。だいたおめェケータイとか言っといて、こんなにデカくちゃ携帯するどころじゃねェだろォォォ」
「案ずるな銀時。俺は自力歩行ができる。おまえに迷惑はかけないぞ」
イヤイヤイヤ。存在自体が迷惑なンですケド。


ヅラ型のケータイは本当に居座りやがった。何時如何なるときも傍にいると言った通りに。朝から晩まで。飯食ってるときも、便所に入ってるときも、仕事のときも、パチンコや甘味どころや飲み屋にまで付いてくる。しかも傍にいるだけじゃなく、俺がやってることにいちいち口を出してくるからうるさくて敵わねェ。

「銀時。卵かけご飯ばかり食していては栄養のバランスが偏るぞ。野菜も食べんか野菜を」

「銀時。パチンコなぞにうつつを抜かしていて良いのか? こんな玉遊びをしていても儲からんぞ。仕事をしろ仕事を」

「銀時。こんなに甘い物ばかり食いおって。自分の体をわかているのか? 甘い物は控えるようにと医者に言われておるのではないのか? とりかえしのつかないことになるぞ」

夜だって当然のように俺の布団に入ってくる。

「銀時。一人寝は寂しかろう。俺がおまえの無聊を慰めてやろう。なに心配することはない。俺にはきちんと穴がある」
ナイナイナイナイナイナイナイナイ!!! コレはナイ! ケータイとナニするなンてありえないから。
「遠慮するな銀時。さあ」
「ナニがさあだッ! 誰がケータイとヤるかァァァァッッッ!!!」
蹴り飛ばしてやった。

こんな調子でなんやかんやとうるさくて、気が休まる暇もねェ。ケータイってこんなに疲れるモンなのか? もっと役に立つ便利なモンじゃなかったのかよ。


その日はパチンコ屋が新台入れ替えをする日で、俺はゼッテーパチンコに行きたかった。だけどケータイがついてくると、オチオチ玉も弾いていられない。だから家に置き去りにすることに決めた。何が何でも置いていってやる。
「なあヅラァ」
ケータイのくせに茶なんかすすってやがる。
「ヅラじゃない。ケータイだ」
決まり文句が返ってきたが無視。
「俺これから出かけるけどおめェはついてこなくていいからな」
「何故だ銀時。俺はおまえのケータイだ。おまえについていかなければ役目を果たせないではないか」
「そうそうソレソレ。おめェはいっつも俺の傍にいて働いてるだろ。そろそろ休みを取ってもいいンじゃねェの? いくらケータイだからって働きづめじゃあそのうち体壊しちまうぞ」
「したが銀時…」
「おめェの主人は誰だ?」
反論しようとしたところをすかさず遮る。
「…銀時だが…」
「そうだろ? だから俺の言うことを聞け。今日は一日家で休ンでろ。ご主人様命令だぞ」
ケータイは困った顔をしていたが、やがてポツリと言った。
「家で休んでいることが、俺の今日の仕事なのだな?」
「そうだよ」
休め休め永久に休ンでてくれ。
「わかった。それがおまえのためになるなら俺は家にいよう」
「イイ子イイ子。ゆっくり休んでな。なンか土産買ってきてやるから」 
うるさいケータイとやっと離れられるってンで俺はウキウキ。
「気を付けてな」
玄関まで見送りにきたケータイはどことなく寂しそうだったが、俺の心は新台に飛んでいた。


「ヘッヘッヘ。久しぶりに大勝ちしたぜ。あー気分イイ。やっぱあの疫病神のケータイを置いてきたのが勝因だな」
銀時はホクホクとして万事屋に帰ってきた。上がりかまちでブーツを脱ぎながら、銀サンのお帰りですよーと奥に声をかけた。今ならうるさいケータイが迎えに出てきても、大らかな気持ちでいられる。そう思っていたのに、ケータイが出てくる気配がない。おかしいなと拍子抜けした気分で居間へ行くと、ケータイは長椅子にぽつんと座っていた。
「オーイヅラ。今日は大当たりをかましましたよ銀サンは。ほらおめェの好きな蕎麦も取ってきてやったぞ」
話しかけてもケータイからは反応がない。おかしいなと思った銀時はケータイの肩をつかんで軽く揺すった。
「オーイ。ヅラ。どうかしたのかよてめェ」
そうしたらうつむいていたケータイが顔を上げた。
「…お帰り…。銀時…」
弱弱しい声で答えるケータイ。目もうつろで顔色も悪い。
「どうした? ヅラ」
銀時はケータイの様子に驚いた。
「俺はケータイだ。主人の傍にいて初めて役に立つことができる。今日はおまえの傍にいることができなかった。俺は役立たずのケータイだ」
「エエエ? おめェナニ言っちゃってくれてンの? 休めって言ったのは俺じゃん。別におめェが役立たずってことじゃねェだろ」
「違うのだ銀時…。俺はおまえから離れるべきではなかった。主人の傍を離れたらもうケータイではいられない…」
段々に声が小さくなっていくケータイ。目の光も弱くなっている。
「すまなかったな銀時。おまえの役に立てなくて…。でもおまえのケータイとして過ごせて良かった。おまえの傍にいられて嬉しかったぞ」
それだけ言うと、がっくりとうなだれ動かなくなった。
銀時はなにがなんだかわからなかった。たった一日置いていかれただけで、機能停止してしまうなんて。兎は寂しいと死んでしまうと聞いたことがあるが、ケータイもそうなのか? 主人に置いていかれて役立たずだと自分を責め、主人の傍にいられない寂しさに死んでしまうのか?
「オイ。ヅラ。しっかりしろよ。おめェは役立たずなンかじゃねェぞ。動けよヅラ。ヅラァァァァァ!!!」


はっとして目が覚めた。そのままぼんやりと天井を見つめていた。
「ああ…。夢か…。夢みてたンだ俺…」
むっくりと起き上がってはあと大きく溜息をついた。
「しかしなンてェ夢だよオイ。ヅラがケータイになったってなんだよ。ンなことあるワケねーじゃん」
横を見れば桂が眠っている。居酒屋で二人で飲んだ後、万事屋に連れてきていっしょに布団に入ったのだ。長い睫をふさりと伏せて形の良い小さな唇を薄く開いて寝ている桂はいつもと変わらない。
「変な夢だったなぁ…。明日ヅラに話したらどンな顔すっかな」
ひそりと呟いたら、それが聞こえたのか桂がぱちりと目を開けた。
やべェ起こしちまったかと思っていると、桂の目がこちらを向いた。唇が物言いたげに開く。そして桂は歌い出した。
「リィングディンドンリィングディンディンドン。リィングディンドンリィングディンディンドン」
「エエエエエ???!!!」



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