日々諸々
H21年1月30日登録
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久しぶりに小噺です。一日遅くなりましたが、母の日にちなんだ話です。もちろん銀桂で。
続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。新しい話に拍手をいただけてとても嬉しいです。次もがんばります。
続きからどうぞ。
拍手ありがとうございました。新しい話に拍手をいただけてとても嬉しいです。次もがんばります。
桂は口うるさい。やることなすことにいちいち揚げ足を取り、ネチネチガミガミと責めてくる。おめェはどこのお母さんだと思ったことは数知れず。それこそ子供の頃から。
「今日の茶菓子はなんだろな~」
桂の家の居間の畳に寝転がって銀時はのん気につぶやいた。
「待たせたな。銀時」
桂が盆を手に居間に入ってきた。
「待ってましたァヅラ。今日はナニ?」
「ヅラじゃない。桂だ。それになんだおまえは。俺に会いに来たのかそれとも菓子に用があって来たのか?」
眉間に皺を寄せる桂。
「ナーニ言っちゃってくれてるのかなヅラ君は。ツレの顔を見に来たに決まってンデショ」
しれっと言いながらも目は盆の上の細長い箱に釘付けだ。桂ははあと溜息をついた。
「まあ良い。今日はこれだ」
そう言って箱を開ける。
「うおっ! ドーナツじゃん」
銀時の目が輝いた。箱の中には種類の違うドーナツが十個ほど詰められていた。
「どれがいいかな~。やっぱコレかな~」
粉砂糖がいっぱいかかったドーナツに目をつけて早速つかみ出そうとしたら、手をぺちっと叩かれた。
「イテッ。ナニすんだよヅラ」
「行儀が悪いぞ銀時。皿に乗せてからにせんか」
「ナニ言ってンだよ。ドーナツは手づかみで食うのがフツーだろ? いちいち皿に乗っけたりまどろっこしいことしてられっかよ」
咎める桂を無視して銀時はさっさとドーナツを口に運んだ。それをじろりと睨んでから、桂は自分のドーナツを皿に乗せてフォークで切り分ける。
「あー美味ェ。銀サンしあわせ。やっぱ世の中に欠かせないのは甘いモンだよね~」
もっさもっさとあっという間に一個を平らげた。桂は切り分けたドーナツをちまちまと食べている。
「おめェそんな食い方で美味いワケ? もっとこうがーっと豪快に食べた方がぜってー美味いって」
「やかましい。おまえのような食い方では食べ物が泣くわ」
「おめェの食い方のほうが食べ物を冒涜してると思うケド」
憎まれ口を叩きながら銀時の目は次のドーナツを物色していた。
「ンー。次はどれいこうかな~。チョコがかかってるヤツか。それとも砂糖衣がかかってるヤツにしようかな~」
指についている粉糖をべろべろ舐めていた。
「汚いぞ。銀時」
とたんに桂の声が飛んでくる。
「指を舐めるのはやめろ。懐紙でふかんか懐紙で」
「へーへー。次はそうしますよー」
言い返しても良かったのだが、そうすると延々と言い合いが続くのはわかっている。今はドーナツを食べるのが先だ。だから適当に返事をしておいた。
「あー食った食った。美味かった~」
箱をほぼ空にする勢いでドーナツを食べた銀時は満足そうに腹をさすった。
「腹一杯になったら眠くなってきた。ちょっと寝てもいい?」
桂の答えを聞く前にゴロリと畳に横になる。
「食ってすぐに寝るなどだらしのない。牛になるぞ」
桂が文句を言っている。
「あーもういいの。だらしなくても牛になってもいいの。牛になったら自分で乳出して、それで生クリームを作って食うからいいの」
寝入りばなのだらだらとした声で返事をした。
「馬鹿者。おまえがなるのは雄牛だ。乳が出るものか」
文句を言い続ける声も遠のいて、銀時は気持ちよく寝息をたて始めた。
一刻ほどして銀時はふと目が覚めた。のそりと起き上がってみると、毛布がかけられていることに気が付いた。寝冷えをしないようにと桂がかけてくれたのだ。
「起きたのか銀時」
気が付いた桂が声をかけた。銀時が寝ている間彼は書き物をしていたらしい。 座卓の上に硯や紙が置かれている。
「銀時。涎がついている」
そう言いながら近づいてきた桂は、懐紙を出して銀時の口元を拭ってやった。
「まったく子供の頃から締まりのない口だな」
一言余計なことを言う桂に、おめェだって寝てるときは涎出てンじゃねェかと思った。
「そろそろ夕刻だ。夕飯を食べていくか? 銀時」
「んー。今日は帰ェるわ。神楽にナンも言わねェで出てきちまったし」
「それなら早く帰らんか。リーダーがお腹を空かして待っているぞ。可哀想ではないか」
まったくおまえは子供達を置いてふらふらしおって、それでも彼らの親代わりか万事屋の主なのかと説教が始まったので、銀時はとっとと桂の家を逃げ出した。
帰り道、買い物をしようと立ち寄った大江戸ストアの店先でカーネーションが売られていた。
「そっか。今日は母の日か。だからカーネーションね」
鉢植えや花束になったカーネーションを眺めていたらふと桂の顔が浮かんだ。
(なんでヅラ? これはお母さんに感謝してあげるモンだろ? ヅラはお母さんじゃねェじゃん)
けれど桂は世話好きで面倒見たがりで口うるさくてネチネチしていて説教するし。
「アレ? ヅラってお母さん? お母さんみたいじゃね? お母さん的なアレを持ってね?」
今日だって、行儀が悪いだの指を舐めるなだのだらしがないだの次から次へと小うるさかった。
だけど、寝ている間にそっと毛布をかけてくれたり涎をふいてくれたりした。そして誰よりも銀時のことをわかってくれている。
「やっぱヅラってお母さんんんんん?」
夜になって神楽が押入れに引き上げてから、銀時は再び桂の家を訪れた。
「どうしたのだ? 銀時。なにかあったのか?」
桂は驚きながらも銀時を家に招きいれる。
「べっつに~。特にナニがあるってワケでもねェんだケド」
そう言ってからほらよと桂に手渡した。それは一本の赤いカーネーション。
「どうしたのだ? 銀時。やはりなにかあるのか? おまえが花を持ってくるなんて。どういう風の吹き回しだ?」
「いや。なんとなく」
「今日の茶菓子はなんだろな~」
桂の家の居間の畳に寝転がって銀時はのん気につぶやいた。
「待たせたな。銀時」
桂が盆を手に居間に入ってきた。
「待ってましたァヅラ。今日はナニ?」
「ヅラじゃない。桂だ。それになんだおまえは。俺に会いに来たのかそれとも菓子に用があって来たのか?」
眉間に皺を寄せる桂。
「ナーニ言っちゃってくれてるのかなヅラ君は。ツレの顔を見に来たに決まってンデショ」
しれっと言いながらも目は盆の上の細長い箱に釘付けだ。桂ははあと溜息をついた。
「まあ良い。今日はこれだ」
そう言って箱を開ける。
「うおっ! ドーナツじゃん」
銀時の目が輝いた。箱の中には種類の違うドーナツが十個ほど詰められていた。
「どれがいいかな~。やっぱコレかな~」
粉砂糖がいっぱいかかったドーナツに目をつけて早速つかみ出そうとしたら、手をぺちっと叩かれた。
「イテッ。ナニすんだよヅラ」
「行儀が悪いぞ銀時。皿に乗せてからにせんか」
「ナニ言ってンだよ。ドーナツは手づかみで食うのがフツーだろ? いちいち皿に乗っけたりまどろっこしいことしてられっかよ」
咎める桂を無視して銀時はさっさとドーナツを口に運んだ。それをじろりと睨んでから、桂は自分のドーナツを皿に乗せてフォークで切り分ける。
「あー美味ェ。銀サンしあわせ。やっぱ世の中に欠かせないのは甘いモンだよね~」
もっさもっさとあっという間に一個を平らげた。桂は切り分けたドーナツをちまちまと食べている。
「おめェそんな食い方で美味いワケ? もっとこうがーっと豪快に食べた方がぜってー美味いって」
「やかましい。おまえのような食い方では食べ物が泣くわ」
「おめェの食い方のほうが食べ物を冒涜してると思うケド」
憎まれ口を叩きながら銀時の目は次のドーナツを物色していた。
「ンー。次はどれいこうかな~。チョコがかかってるヤツか。それとも砂糖衣がかかってるヤツにしようかな~」
指についている粉糖をべろべろ舐めていた。
「汚いぞ。銀時」
とたんに桂の声が飛んでくる。
「指を舐めるのはやめろ。懐紙でふかんか懐紙で」
「へーへー。次はそうしますよー」
言い返しても良かったのだが、そうすると延々と言い合いが続くのはわかっている。今はドーナツを食べるのが先だ。だから適当に返事をしておいた。
「あー食った食った。美味かった~」
箱をほぼ空にする勢いでドーナツを食べた銀時は満足そうに腹をさすった。
「腹一杯になったら眠くなってきた。ちょっと寝てもいい?」
桂の答えを聞く前にゴロリと畳に横になる。
「食ってすぐに寝るなどだらしのない。牛になるぞ」
桂が文句を言っている。
「あーもういいの。だらしなくても牛になってもいいの。牛になったら自分で乳出して、それで生クリームを作って食うからいいの」
寝入りばなのだらだらとした声で返事をした。
「馬鹿者。おまえがなるのは雄牛だ。乳が出るものか」
文句を言い続ける声も遠のいて、銀時は気持ちよく寝息をたて始めた。
一刻ほどして銀時はふと目が覚めた。のそりと起き上がってみると、毛布がかけられていることに気が付いた。寝冷えをしないようにと桂がかけてくれたのだ。
「起きたのか銀時」
気が付いた桂が声をかけた。銀時が寝ている間彼は書き物をしていたらしい。 座卓の上に硯や紙が置かれている。
「銀時。涎がついている」
そう言いながら近づいてきた桂は、懐紙を出して銀時の口元を拭ってやった。
「まったく子供の頃から締まりのない口だな」
一言余計なことを言う桂に、おめェだって寝てるときは涎出てンじゃねェかと思った。
「そろそろ夕刻だ。夕飯を食べていくか? 銀時」
「んー。今日は帰ェるわ。神楽にナンも言わねェで出てきちまったし」
「それなら早く帰らんか。リーダーがお腹を空かして待っているぞ。可哀想ではないか」
まったくおまえは子供達を置いてふらふらしおって、それでも彼らの親代わりか万事屋の主なのかと説教が始まったので、銀時はとっとと桂の家を逃げ出した。
帰り道、買い物をしようと立ち寄った大江戸ストアの店先でカーネーションが売られていた。
「そっか。今日は母の日か。だからカーネーションね」
鉢植えや花束になったカーネーションを眺めていたらふと桂の顔が浮かんだ。
(なんでヅラ? これはお母さんに感謝してあげるモンだろ? ヅラはお母さんじゃねェじゃん)
けれど桂は世話好きで面倒見たがりで口うるさくてネチネチしていて説教するし。
「アレ? ヅラってお母さん? お母さんみたいじゃね? お母さん的なアレを持ってね?」
今日だって、行儀が悪いだの指を舐めるなだのだらしがないだの次から次へと小うるさかった。
だけど、寝ている間にそっと毛布をかけてくれたり涎をふいてくれたりした。そして誰よりも銀時のことをわかってくれている。
「やっぱヅラってお母さんんんんん?」
夜になって神楽が押入れに引き上げてから、銀時は再び桂の家を訪れた。
「どうしたのだ? 銀時。なにかあったのか?」
桂は驚きながらも銀時を家に招きいれる。
「べっつに~。特にナニがあるってワケでもねェんだケド」
そう言ってからほらよと桂に手渡した。それは一本の赤いカーネーション。
「どうしたのだ? 銀時。やはりなにかあるのか? おまえが花を持ってくるなんて。どういう風の吹き回しだ?」
「いや。なんとなく」
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